2016 Fiscal Year Annual Research Report
食細胞による死細胞の貪食機構とそれに伴う免疫制御機構の解明
Project Area | Homeostatic Regulation by Various Types of Cell Death |
Project/Area Number |
26110006
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
田中 正人 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (00294059)
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Project Period (FY) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 細胞死 / マクロファージ / 貪食 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、CD169マクロファージによる死細胞の貪食機構とそれに伴う免疫制御機構の解明を目的として行った。さらに、本研究遂行の過程で、好中球細胞死の分子機構とその病理的意義に関する新たな知見を得ることができ、これに関する解析も合わせて進めた。具体的には以下の通りである。 1.マクロファージによる死細胞の認識機構 CD169陽性マクロファージが、死細胞由来因子を認識してCCL8を特異的に産生する分子機構の解析を進めた。すでに我々は、マクロファージ表面分子に対するモノクローナル抗体を作製し、死細胞レセプター分子を認識する可能性のあるモノクローナル抗体を複数樹立している。いくつかの抗体に関しては、アフィニティカラムにより抗体が認識する分子を精製し、質量分析によりその分子を同定することに成功している。現在、同定した分子の機能解析を進めるとともに、新たな阻害抗体のスクリーニングを行っている。 2.疾患動物モデルにおける好中球細胞死の意義 我々が以前に開発した劇症型腎虚血再灌流傷害モデルにおいて、袖岡班が開発した細胞死阻害化合物が傷害の改善効果を有することをつきとめていたが、この効果が、好中球細胞死であるNETosisを阻害するによることを明らかにした。さらに、NETosisを制御する作用を有する化合物の探索の過程で、ある種の化合物が活性化好中球のNETosisを亢進する作用を持つこと、およびこの化合物が好中球の脂質過酸化を著明に亢進することを見いだした。さらに、ある種の過酸化脂質を好中球に加えると、NETosisが誘導されることも明らかにした。 3.肝細胞死共同研究プロジェクト 引き続き、田中稔班と中野班と共同で、各種肝細胞死モデルにおける肝マクロファージの動態の解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、多様な細胞死の分子機構の解明と死細胞が発信する情報(ダイイングコード)の解明という領域の2つの目標のうち、ダイイングコードによるマクロファージの機能制御の解明を第一の目標として進めている。これまでの3年間で我々は、CD169陽性のマクロファージが、腸管において、死細胞貪食を行うと共に細胞死の様式に応じた免疫応答を誘導することを明らかにしてきた。現在、CD169陽性マクロファージによる死細胞応答に関与する分子の同定のために、CCL8産生を指標として、死細胞応答を阻害する機能を有するマクロファージの表面分子に対する抗体をスクリーニングし、複数のクローンを樹立することができた。今後、これらの抗体の認識する分子の機能解析を重点的に行いたいと考えている。さらに、我々は、劇症型腎虚血再灌流傷害モデルの解析を契機として、虚血再灌流傷害における好中球細胞死(NETosis)の役割についても解析を進めている。これは領域の目標の一つである、多様な細胞死の分子機構の解明に資するものであると考えている。このプロジェクトに関しては、現在、袖岡班が合成したNET形成促進化合物を我々が評価することで、活性の高い化合物の合成に成功し、さらにこの化合物の標的分子の同定に向けて、研究を行っている。さらに、酸化脂質によるNET形成促進に関しては、公募班の今井班と連携して解析を進めている。このように、各班の強みを生かした、効率よい共同研究が進められている。肝細胞死共同プロジェクトに関しても、田中稔班、中野班と緊密な連携ができている。
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Strategy for Future Research Activity |
1. マクロファージによる死細胞の認識とそれに伴う免疫制御機構 我々は、これまでにCD169陽性マクロファージが、死細胞由来因子を認識して、CCL8を特異的に産生することを明らかにし、これを阻害するマクロファージ表面抗原に対する複数の抗体の樹立にも成功した。来年度は、引き続き、抗体が認識するマクロファージ表面上のレセプターの同定と機能解析を行っていく。また、我々は、これまでの研究によりCD169陽性マクロファージが、CD169分子を介して死細胞由来の微小粒子を認識し、炎症性サイトカインの産生を増強することも見いだした。そこで本年度は、このマクロファージによる微小粒子による炎症惹起の分子機構の解析も行う予定である。 2.好中球のNET形成機構の解明 我々はマクロファージ非存在下における虚血再灌流傷害の増悪に、好中球のNET形成(NETosis)の促進が関与している可能性を示す知見を得ている。本年度、我々は、細胞死制御化合物等の探索によりNET形成を促進する化合物を同定した。さらに、この化合物によるNET形成促進に脂質酸化が関与していること、および、NET形成の過程でダイイングコードとして放出される酸化脂質がNET形成を連鎖的に誘導している可能性を見いだした。来年度は袖岡班、今井班とのさらなる連携により、このNET形成に影響を与える低分子化合物の探索および標的分子の同定を通じて、NET形成の分子機構の解明を試みる。 3. 肝細胞死共同研究プロジェクト 引き続き、食細胞による肝死細胞貪食の解析を担当する。各種マクロファージを誘導的に消失できるマウスを用いて、肝傷害モデルにおける各マクロファージの病態への関与を検討する。
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[Journal Article] Regulation of B cell differentiation by the ubiquitin-binding protein TAX1BP1.2016
Author(s)
Matsushita N, Suzuki M, Ikebe E, Nagashima S, Inatome R, Asano K, Tanaka M, Matsushita M, Kondo E, Iha H, Yanagi S.
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 6
Pages: 1-12
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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