2017 Fiscal Year Annual Research Report
Systemic mechanisms of response to hypoxic stresses
Project Area | Oxygen biology: a new criterion for integrated understanding of life |
Project/Area Number |
26111002
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山本 雅之 東北大学, 医学系研究科, 教授 (50166823)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 教郎 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (20447254)
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Project Period (FY) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 低酸素応答 / 遺伝子改変マウス / 貧血 / 腎臓病 |
Outline of Annual Research Achievements |
赤血球は各臓器への酸素供給を担う重要な細胞であることから、動物個体の酸素環境は赤血球の循環量によって規定されている。赤血球造血は主に造血因子エリスロポエチンにより促進されるので、エリスロポエチン産生制御系が個体レベルの酸素供給制御の基盤となっている。これまでにエリスロポエチンの産生制御機構を解明してきたが、本年度には、腎臓のエリスロポエチン産生細胞(REP細胞)におけるエリスロポエチン遺伝子発現が鉄によって抑制されること見出した。また、その分子メカニズムとして、エリスロポエチン遺伝子発現を誘導する転写因子HIF2aの機能を鉄が阻害することをマウスの解析により明らかにした(論文投稿中)。HIF2aやHIF1aは、低酸素ストレス誘導性の遺伝子群の発現を一様に活性化するが、そのとき、HIF2aとHIF1aは標的遺伝子のヌクレオソーム構造を変化させることを発見した。 赤血球減少(貧血)は低酸素ストレスを発生させるが、地中海性貧血のような溶血性貧血では、破壊された赤血球から鉄やヘムが遊離し、酸化ストレスを発生させる。これまで、溶血性貧血では酸素供給不足が病態の本態であると考えられていたが、溶血によって発生した酸化ストレスが様々な臓器を障害することを明らかにした。酸化ストレス防御系のマスター転写因子であるNrf2をマウスにおいて強制的に活性化させたところ、溶血性貧血で併発する多臓器不全が著しく改善された。一方、妊娠高血圧症候群のモデルマウスでは、Nrf2の活性化は病態を悪化させた。この原因として、活性酸素種が胎盤血管形成のシグナル伝達因子として機能していることが考えられた。以上の研究成果により、低酸素ストレスと酸化ストレスが生体に及ぼす影響への理解が深まり、鉄剤やNrf2活性化剤の作用機序の一端を解明することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低酸素誘導性のエリスロポエチン遺伝子発現制御機構の解析では、鉄がエリスロポエチン産生を抑制することを見出した。この成果は、貧血治療薬として用いられている鉄剤が内在性のエリスロポエチン産生レベルを低下させることを示しており、鉄剤の効果に関する再検討の必要性を提案するものである。 溶血性貧血の病態に関して、酸化ストレスの影響を明らかにしたことにより、世界中で多数の患者が存在する地中海性貧血の治療に有効な情報を提供することができた。Nrf2活性化剤は臨床試験が始まっており、今後の応用が期待できる。一方、妊娠高血圧症候群においては、Nrf2活性化剤が病態を悪化させたことから、酸化ストレスの2面性を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
鉄によるREP細胞のHIF2a抑制の分子メカニズムを明らかにする。そのために、HIF2aを抑制性に制御するPHDを阻害する薬剤をマウスに投与し、PHDの関与について検討する。また、ラットを用いた解析系を取り入れ、マウスで明らかにしてきたエリスロポエチン発現制御機構の普遍性を検討する。すでに予備的解析により、ラットのREP細胞とエリスロポエチン遺伝子発現を検出することに成功している。ラットはマウスと比較してヒトに近い病態モデルを多数用いることが可能なので、病態に即した解析を行う。さらに、鉄は強力な酸化ストレス誘導要因であるので、REP細胞の鉄による障害における酸化ストレスとNrf2の影響を検討する。これまでにREP細胞の細胞株を樹立することに成功したので、その性状解析と腎臓病の分子病態解明を目指す。また、エリスロポエチン産生以外のREP細胞の役割を探索する。
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Research Products
(29 results)