2014 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス対処行動におけるモノアミン制御経路の障害と回復
Project Area | Mechanisms underlying the functional shift of brain neural circuitry for behavioral adaptation |
Project/Area Number |
26112010
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
相澤 秀紀 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (80391837)
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Project Period (FY) |
2014-06-27 – 2019-03-31
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Keywords | ドーパミン / セロトニン / ストレス / 機能シフト / モノアミン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ストレス対処行動及びその障害の基盤にあるモノアミン制御回路の適応的動態を明らかにする事を目指した。モノアミンにはドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンなどがあるが、本年度は行動制御への関与が示唆されているドーパミン神経系のストレス対処行動への関与を検討した。1)ストレス対処行動を担うドーパミン制御経路における遺伝子改変技術の開発。ドーパミン産生細胞が集中して存在する黒質/腹側被蓋野へ入力する手綱核や線条体等の神経細胞の遺伝子改変を行うため、同領域の小林班と共同研究でGFPやCas9やguide RNAを発現するレンチウイルスベクターの開発を行った。細胞体にGFPを発現する細胞の分布を線条体において調べたところ高効率な逆行性感染が確認された。2)ストレス対処行動におけるドーパミン制御経路の役割。中脳ドーパミン作動性神経細胞の活動の一部は手綱核による抑制的な制御下にあることが報告されている。このようなドーパミン制御経路のストレス対処行動における役割を明らかにするため、同領域の礒村班と共同で尾懸垂試験や社会回避行動に対する手綱核の活動性変化の影響を調べた。実験の結果、手綱核の過剰活性化はストレス対処行動において受動的行動選択へと行動をシフトさせることが明らかとなった。これらの結果をまとめてJournal of Neuroscience誌へ発表した。3)ストレス対処行動におけるドーパミン神経細胞の活動動態。尾懸垂試験における中脳ドーパミン神経細胞の働きを調べるため、テトロード電極による自由行動下での多点同時神経活動記録を行った。実験の結果、ドーパミン産生細胞の豊富な腹側被蓋野の神経細胞の一部は、受動的対処行動(無動)から能動的対処行動(もがき)への移行時に発火率の上昇もしくは減少を示すなど神経活動の多様性がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究成果により中脳ドーパミン産生領域に入力を送る手綱核がストレス対処行動のシフトに関与する事を論文発表およびプレスリリースで発表した。このように、領域内の礒村班と共同し脳内モノアミン代謝の制御にあたる手綱核の機能の一端を明らかにした事は大きな成果である。さらに、領域内の小林班の共同し、ゲノム編集と高効率ウイルスベクターを組み合わせた新たなモノアミン研究のツールを開発できたことにより今後の研究展開への道筋が明らかとなりつつある。一方、ストレス対処行動におけるドーパミン制御回路の活動動態についても一部の神経細胞活動で興味深い所見を得ているものの、網羅的な研究成果として論文発表するためには定量的解析を待たなければいけない。これらの事実により本年度の研究目的の達成度は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の主な研究成果により、1)脳内ドーパミン代謝の制御領域として手綱核に注目し、ストレス対処行動における役割が明らかとなり、2)これらの脳内モノアミン代謝の制御経路を特異的に操作する新たなウイルスベクターを開発した。次年度以降は、特に領域内の共同研究として進めてきた新規ウイルスベクターを応用し、特定のモノアミン制御経路の機能障害を実験的に引き起こす事で、ストレス対処行動におけるそれぞれの経路の役割を行動実験を通して明らかにする予定である。また、機能障害からの回復過程に注目し、行動選択の変化に伴う神経活動の変化を電気生理学的に検討し、他経路の操作による回復過程への影響を検討する。
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Research Products
(5 results)