2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Cell competition: a mechanism for survival of the fittest in the multi-cellular community |
Project/Area Number |
26114004
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西田 栄介 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (60143369)
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Project Period (FY) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 上皮組織 / 遺伝子ノックダウン法 / 遺伝子導入法 / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、腸上皮組織における細胞競合の分子機構の解明を目指すものである。2種類の細胞競合を対象とする。一つは、分化細胞における細胞競合、細胞脱落のシステムであり、もう一つは、腸上皮組織幹細胞の維持に関わる細胞競合である。前者については、腸上皮組織における脱落を誘起するシグナル伝達機構と腸上皮層からの脱落メカニズムの二つの分子メカニズムを明らかにすることを目指している。 これら二種の細胞競合の分子機構を解析するために、以前に開発した腸上皮組織において簡易に遺伝子ノックダウンする手法をさらに改良した。本方法は、複数の遺伝子の導入並びに複数の遺伝子のノックダウンを同時に行うことが可能であり、本研究を進める上で非常に有利な系となる。また、個体から単離した腸上皮は、適切な培養条件下でオルガノイドとして培養できることが報告されているが、本培養法の改良を行い、オルガノイド培養において、遺伝子をノックダウンあるいはノックアウトする手法の改良を行った。 腸上皮層からの脱落メカニズムについては、細胞が腸上皮層から脱落する過程での関与が推定される細胞骨格系タンパク質や関連タンパク質のノックダウン及びノックアウトの実験に着手し、一部のものは、ノックダウンが行えるようになった。現在、その影響を解析している。また、腸上皮組織における細胞の脱落を免疫組織学的手法により観察する手法の改良をさらに進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腸上皮組織において、細胞競合の生理的意義やその分子機構を解析するための独自の手法として、遺伝子導入並びに遺伝子ノックダウン法を開発してきたが、その改良を行うことが出来た。また、オルガノイド培養法の改良を行い、遺伝子ノックダウン及び遺伝子ノックアウトをより効率よく行えるようになってきた。また、幾つかに遺伝子については、ノックダウンを行い、その影響を調べる段階にまでなった。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに、腸上皮組織における細胞競合の分子メカニズムを解析するための研究的基盤の確立を進めてきた。今年度においても、in vivoでの腸上皮組織への遺伝子導入法及びノックダウン法のさらなる改良を行いつつ、細胞競合に重要な働きをすることが報告されている遺伝子の過剰発現やノックダウンを行い、腸上皮での細胞競合の分子レベルでの理解を目指す。具体的には、(1)前年度に引き続き、すでに他の系で細胞競合における重要性が明らかになっているJNK経路やHippo経路の因子を遺伝子操作することによって腸上皮にどのような影響がもたらされるかを解析する。さらに、複数の遺伝子のノックダウンを同時に行うことが可能であるという特徴を活かして、シグナル伝達経路のクロストークについてもさらに検討する。(2)細胞競合メカニズムについては、アクチン・ミオシン系の関与が示されてきている。また、ビメンチンが重要な役割を果たすことも示されている。そこで、これら因子の役割についての解析を進める。(3)分化細胞における細胞競合の解析に加えて、上皮組織幹細胞維持に関わる細胞競合の解析に本格的に着手する。 前年度までに進めてきた免疫組織学的手法のさらなる改良と腸上皮における細胞の脱落を解析する方法、また、幹細胞維持に関わる細胞競合の解析のための手法の確立を目指す。 前年度までに行った腸上皮のオルガノイド培養法によるアッセイ系の改良を今年度においても進めていく。オルガノイド培養法においては、レンチウイルスによる外来遺伝子の安定的な発現や薬剤誘導による発現制御などの解析を行うことが可能である。そこで、上記の実験系で得られた知見をオルガノイド培養法で解析が行えるよう実験手法の確立も並行して進めていく。 栄養状態や老化が、腸上皮組織の恒常性維持機構に及ぼす影響を細胞競合の果たす役割に着目して解析する実験に今年度より着手する。
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Research Products
(2 results)