2017 Fiscal Year Annual Research Report
上皮細胞の競合に関与する細胞間接着分子の同定と作用機構の解明
Project Area | Cell competition: a mechanism for survival of the fittest in the multi-cellular community |
Project/Area Number |
26114007
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
高井 義美 神戸大学, 医学研究科, 特命教授 (60093514)
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Project Period (FY) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 細胞競合 / 細胞接着 / ネクチン / アファディン / ネクチン様分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞競合では、競合の勝者となる細胞は、隣接細胞の適応度の相対的な低さを感知してこれを敗者細胞として認識し、自身あるいは敗者細胞の細胞内シグナル伝達経路を制御して、敗者細胞の細胞死や細胞層からの離脱を誘導すると考えられる。最近の研究により、これら一連の過程に細胞間接着が重要な役割を果たすことが示唆されている。しかし、細胞競合に関わる細胞間接着分子の実態やその作用機構はほとんど解明されていない。本研究では、哺乳類培養細胞モデルを用い、生化学的・分子生物学的手法により、細胞競合に関与する未知の細胞間接着分子を網羅的に単離・同定する。また、同定した新規接着分子群、並びに申請者が以前に見出した細胞間接着分子ネクチンやNeclを含む既知の細胞接着分子群の細胞競合における機能と作用機構を解析する。さらに、これらの細胞間接着分子群のノックアウトマウスの解析などを通じ、細胞競合の生体レベルでの解析を行う。 これまで、正常上皮細胞と変異細胞を混合培養し、それらから単離した形質膜画分を抗原としてマウスを感作しハイブリドーマを作製してきたが、平成29年度はハイブリドーマの培養上清から得られたモノクローナル抗体ライブラリーを用いて網羅的に免疫染色解析を行い、正常細胞と変異細胞の細胞間接着部位を認識する抗体を同定した。この抗体を用いて免疫沈降を行い、エピトープとなっている膜タンパク質を質量分析法にて同定し、候補分子をいくつか得た。 また、CRISPR-Cas9法を用い、上皮細胞において種々の細胞間接着分子やその裏打ちタンパク質をコードする遺伝子の破壊を行い、ノックアウト細胞株を樹立した。これらの細胞を単独培養すると細胞間接着装置の異常が認められたものがあり、この細胞を野生型の正常細胞と混合培養を行ったところ、野生型細胞に囲まれた遺伝子欠損細胞では、野生型細胞と同様に細胞間接着装置が正常に保たれていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、哺乳類培養細胞競合モデルを用いた既知の接着分子群の細胞競合における機能と作用機構の解析が進んでいる。特に、抗体ライブラリーを用いた細胞競合に関与する接着分子の網羅的同定については候補分子が得られたこともあり、今後の発展が期待でき、この抗体が細胞競合現象を検出するツールとなることが期待できる。また、細胞レベルでの解析では、ある遺伝子のノックアウト細胞株において、単独培養時と、正常上皮細胞との混合培養時では、細胞間接着装置の形成が異なるという現象を見出している。従来の細胞競合現象においては、異常細胞は単独培養時には正常細胞と表現型に差がなく、混合培養時においてのみ、異常細胞は敗者細胞として細胞死や細胞層からの離脱が誘導されるが、研究代表者らが今年度に見出した現象は、単独培養時には正常細胞と異常細胞に表現型の差が認められるものの、混合培養時には異常細胞で認められた表現型が消失するものであった。このような現象は、隣接する上皮細胞において、正常細胞と異常細胞が細胞間接着装置を介して相互に影響を及ぼすモデルになると考えられ、細胞間接着を介した細胞競合現象の解明に寄与すると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
モノクローナル抗体ライブラリーを用いて得られた細胞競合現象に関わる膜タンパク質の候補について、今後は、その分子が真のエピトープ分子であるかどうかを検証するとともに、その分子が果たす細胞競合における役割を詳細に解析する。 ネクチンやNeclは異種細胞間接着のみならず細胞内シグナル伝達へ寄与することから、細胞競合時に変化するシグナル伝達を制御する細胞間接着分子である可能性がある。そこで、上述した研究計画と並行して、ネクチンやその他の既知の細胞間接着分子の細胞競合への関与を検討する。細胞競合への関与が認められた分子については、それらが制御する下流の細胞内シグナル、およびそれを介した細胞競合制御機構を解析する。具体的には、細胞骨格の再編を制御する分子として低分子Gタンパク質を、細胞の生存を制御する分子としてPI3キナーゼやc-Srcを中心とした経路の細胞競合における役割と分子機構を解析する。また、研究代表者は平成29年度の研究で、ある遺伝子のノックアウト細胞株を用いて、隣接する上皮細胞において、正常細胞と異常細胞が細胞間接着装置を介して相互に影響を及ぼすモデルを確立しており、今後はこのモデルを用いて細胞競合における細胞間接着装置の役割と分子機構を解析する。
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Research Products
(7 results)