2014 Fiscal Year Annual Research Report
正常上皮細胞と変異細胞間に生じる細胞競合の分子メカニズムの解明
Project Area | Cell competition: a mechanism for survival of the fittest in the multi-cellular community |
Project/Area Number |
26114008
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤田 恭之 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (50580974)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 俊樹 神戸大学, 学内共同利用施設等, 教授 (30313092)
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Project Period (FY) |
2014-06-27 – 2019-03-31
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Keywords | 細胞競合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は新学術領域班において、正常上皮細胞と変異細胞間に生じる細胞競合の分子メカニズムの解明を担当し、異なる細胞間の境界で特異的に機能する分子群を様々な手法にて同定・解析することを大きな目的としている。さらに、申請者が確立した細胞競合マウスモデルシステムを用いて、スクリーニングで同定された分子の機能を解析することを目指している。平成26年度は特に、正常上皮細胞に隣接する変異細胞に細胞非自律的に起こる変化にフォーカスを当てて解析を行った。まず、生化学的なスクリーニングによって、VASPとEPLINという二つの分子が正常上皮細胞に囲まれた変異細胞で活性や発現が亢進し、変異細胞の正常上皮細胞層からの排除に関与していることを見出した(Anton et al., 2014, JCS; Ohoka et al., 2015, JCS)。さらに、正常上皮細胞に囲まれたRas変異細胞において、ミトコンドリアの活性低下と解糖経路の活性化が生じていることが分かった。これはがんの超初期段階において、Warburug効果が生じていることを示唆しており、またその発生に細胞競合が関与していることを示している(投稿準備中)。さらに、低容量のタモキシフェンを投与することによって、腸管上皮層にモザイク様にがん原性変異を誘導することのできる世界初の細胞競合マウスモデルシステムを確立することに成功した。実際にこのシステムを用いて、正常上皮細胞に囲まれたRas変異細胞が管腔側に排除されることを確認している。このように平成26年度は順調に研究が進展し、研究期間中に多くの知見を得るための基盤を築くことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「異なる細胞間の境界で特異的に機能する分子群のスクリーニング」は順調に推移し、同定した分子のうちEPLINとVASPについては機能解析を終え、論文にまとめることができた(Anton et al., 2014, JCS; Ohoka et al., 2015, JCS)。また、Warburg効果と細胞競合の関連など、がん発生のメカニズムに迫る重要な知見を得ることにも成功している。さらに、世界初の細胞競合マウスモデルシステムを確立することに成功し、実際にそのシステムを用いて正常上皮細胞が免疫系を介さないEDAC(Epithelial Defense Against Cancer)という抗腫瘍能を有していることも検証することができた。このように研究は順調に進展しており、今後の研究発展のための礎を築くことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、スクリーニングを継続するとともに、同定した分子についてはその機能の解析を細胞培養系とマウスモデルシステムを用いて推進していく。また研究分担者とともに、正常上皮細胞と変異細胞間に生じる細胞競合への脂質の関与についても研究を進めていく。
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