2017 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular mechanisms of cell competition between normal and transformed cells
Project Area | Cell competition: a mechanism for survival of the fittest in the multi-cellular community |
Project/Area Number |
26114008
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤田 恭之 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (50580974)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 俊樹 神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 教授 (30313092)
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Project Period (FY) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 細胞競合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は新学術領域班において、正常上皮細胞と変異細胞間に生じる細胞競合の分子メカニズムの解明を担当し、異なる細胞間の境界で特異的に機能する分子群を様々な手法にて同定・解析することを大きな目的としている。さらに、細胞競合マウスモデルシステムを用いて、スクリーニングで同定された分子の機能を解析することを目指している。特に、本研究では正常上皮細胞に隣接する変異細胞側に生じる細胞非自律的な変化に焦点を当てて解析を進めている。平成29年度は以下の2つの研究プロジェクトについて大きく研究が進展し、論文として発表することができた。 1)正常上皮細胞とp53変異細胞感に生じる細胞競合:正常上皮細胞層にp53変異(R175H or R273H)が生じると変異細胞はネクロプトーシスによって細胞死を起こし、上皮層の基底層側に排除されることが分かった。さらに、Ras変異細胞層にp53変異が生じるとネクロプトーシスは起こらないことから、がん原性変異の生じる順番が細胞競合の発生頻度に影響を与えることが分かった。 2)肥満によって細胞競合によるRasV12変異細胞の排除が抑制:高脂肪食を与えて肥満体になったマウスの腸管と膵臓においては、RasV12変異細胞の上皮層からの排除が抑制されることを示した。さらに、抗炎症剤を投与すると変異細胞の排除が促進されたことから、肥満による炎症の誘起がその一因となっていることが分かった。このデータは環境要因が細胞競合に大きな影響を与えうることを示している。 これらの研究成果は、それぞれCell Reports誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、正常上皮細胞に囲まれた変異細胞内において生じる細胞非自律的な変化の解明を目指すものである。これまでに研究は当初の計画を越え、順調に進展している。平成26年度にEPLINとVASPという二つの重要な制御因子を同定し、それぞれについて論文で発表した(Anton et al., 2014, JCS; Ohoka et al., 2015, JCS)。さらに、平成27年度は、エンドサイトーシスと代謝変化という二つの細胞プロセスが細胞競合に関与することを突き止め、それぞれ一流誌に論文がアクセプロされた(Saitoh et al., PNAS, 2017; Kon et al., Nature Cell Biology)。さらに、スクリーニングによって複数の分子の同定に成功した。さらに、平成28年度には、がん遺伝子の変異の重ね合わせによって細胞競合現象が大きく影響を受けることや、環境要因が細胞競合現象に大きなインパクトを与えうるという、新たな概念を次々と提示することに成功した(Watanabe et al., Cell Reports, 2018; Sasaki et al., Cell Reports, 2018)。このように、研究は順調に進展しており、今後の研究のさらなる発展が大いに期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、最近明らかになったcalcium waveと細胞の排除との機能的関連について、より詳細に調べていく予定である。
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