2016 Fiscal Year Annual Research Report
Exploring stress-responsive molecules involved in cell competition
Project Area | Cell competition: a mechanism for survival of the fittest in the multi-cellular community |
Project/Area Number |
26114009
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
一條 秀憲 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (00242206)
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Project Period (FY) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 細胞競合 / Scribble / トランスクリプトーム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は哺乳類細胞において細胞競合を司る分子メカニズムをストレス応答の観点から明らかにすることである。平成28年度の途中で我々が構築しようとしていた(1)ゲノムワイドsiRNAスクリーニングによる網羅的アプローチ、のモデル系に関して他の研究グループから新たな細胞競合の分子メカニズムが報告された。そのため、その報告に基づいてDNAマイクロアレイを用いた解析を行ったところ、同様の現象が観察され、siRNAスクリーニングを遂行すべき細胞株の選択基準を得ることができた。この条件に照らし合わせてヒトやマウスの培養細胞で細胞競合モデルの作製に取り組んだが、これまでのところ条件を満たす細胞株を見つけることができず、残り期間とも照らし合わせて(1)ゲノムワイドsiRNAスクリーニングによる網羅的アプローチは断念し、代わりにDNAマイクロアレイ解析から得られた正常細胞とScribbleノックダウン細胞のトランスクリプトームの網羅的データから細胞競合現象へのアプローチを行った。その結果、(2)Candidateアプローチで我々が注目していたASK1関連分子がScribble KD細胞で発現上昇することが明らかになり、この分子のノックダウンで実際にScribble KD依存的な細胞競合現象が抑制できることを見出した。このほかにも細胞競合現象に関わる液性因子も同定できており、siRNAスクリーニングの穴を埋める十分な成果が得られていると考えている。また、(2)CandidateアプローチにおいてもASK1、p38の細胞競合現象への関与についてより掘り下げた解析を行うと同時に、上記で見出したASK1関連分子との関係の解析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は(1) ゲノムワイドsiRNAスクリーニングによる網羅的アプローチを行うためにヒトやマウスの培養細胞を用いて細胞競合系の構築を試みたが、研究実績の概要に記した通り、MDCK細胞以外での構築が困難であったため残りの研究機関と照らし合わせてこのアプローチは断念した。しかしながら、これらの過程で行った正常細胞とScribble KD細胞のトランスクリプトームの網羅的比較から、新たに細胞競合に関与する遺伝子の同定が進み、もともとの計画にはない方向からの研究成果が得られている。さらに、この成果は(2) Candidateアプローチの遂行においてもプラスに働き、本来(1)の結果に基づいて、(2)と関連させて解析する予定であった事項に関して補填する形になった。以上のことから研究方法の見直しは余儀なくされたが、全体的な研究の進展については当初の計画に沿った形で概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
前述した通り、ゲノムワイドsiRNAスクリーニングに関してはこれまでに得られた情報をもとにスクリーニング系の構築は試みるものの、実施については残り期間を考慮して断念することとした。一方で、正常細胞とScribble KD細胞のトランスクリプトームの網羅的比較から、浮かび上がった細胞競合に関与する分子の解析を精力的に進める。今年度の解析でNAD代謝に関わる分子とストレス応答性に発現する液性因子がどちらもノックダウンによってScribble KD依存的に観察される細胞競合現象を抑制できることが明らかになったため、 これらの発現誘導及びシグナル伝達の分子機構を解析する。運動性を制御する液性因子の関与が示唆されていることから、細胞遊走など細胞の動きをモニターできる測定系も導入し、正常細胞とScribble KD細胞の間でどのような形の相互作用が起こっているか解析する。 Candidateアプローチについては、当初から我々が注目していたASK1やp38などのMAPKが上記のNAD代謝関連分子により制御される知見を得ているため、MAPK経路とこの分子の関係性について精査することで、Scribble KDによる細胞競合を担う分子メカニズムを明らかにできると考えられる。このほかにもトランスクリプトーム解析によって得られた結果の解析から細胞競合に関与し得る分子をCandidateとしてピックアップし解析することで、これらの分子の関与及び分子間の相互作用を明らかにする。
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Research Products
(18 results)