2017 Fiscal Year Annual Research Report
Exploring stress-responsive molecules involved in cell competition
Project Area | Cell competition: a mechanism for survival of the fittest in the multi-cellular community |
Project/Area Number |
26114009
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
一條 秀憲 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (00242206)
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Project Period (FY) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 細胞競合 / Scribble / トランスクリプトーム解析 / 液性因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の進捗状況に記載したように、(1)ゲノムワイドsiRNAスクリーニングによる網羅的アプローチを行うために必要であったヒトまたはマウスの培養細胞を用いた細胞競合系の構築について、以前のMCF-7細胞に加えてIMCD3細胞などを用いたがスクリーニング系として利用できる段階まで明確に競合現象を検出することは困難であった。従って、昨年度行ったMDCK細胞における網羅的トランスクリプトームの解析に集中して研究を行なった。その結果、本研究で発見したScribble KDによる変異細胞内の遺伝子変化のうち、発現増加するものとして、(i)細胞内NAD量の低下を介して細胞競合における細胞脆弱性に関与すると思われる遺伝子、(ii)液性因子として放出され、細胞の運動能に関わる遺伝子発現を変化させる遺伝子を同定した。これらの知見から解析を進めた結果、(i)について、実際に変異細胞内でNAD濃度が低下していること、さらにNADを増やす処置をすると変異細胞の脆弱性が回避されることを明らかにした。また、(ii)について、この液性因子の受容体に対する阻害剤の処置により、細胞競合による変異細胞の排除が抑制されることを明らかにした。以上のように、ゲノムワイドsiRNAスクリーニングによる網羅的探索は実施できなかったが、代替的に網羅的トランスクリプトームの解析から細胞競合に関与する遺伝子が同定でき、その関与のメカニズムの解析が進展した。 (2)のcandidateアプローチにおいて対象としているASK1-p38経路は、上記の(i)の分子との関連が既に先行論文で報告されていたため、NADを増やす処置において、変異細胞内のp38の活性を検討したところ、コントロールよりもp38の活性化が抑制されていた。このように、トランスクリプトーム解析から得られた遺伝子がcandidateアプローチで注目していたシグナル伝達経路とマージする知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記載したとおり、当初計画していたゲノムワイドsiRNAスクリーニングは細胞系の問題により実施できなくなったが、この実験で主眼としていた細胞競合に関与する遺伝子の網羅的探索という目的は、その後に行ったMDCK細胞の正常細胞、変異細胞(Scribble KD)のトランスクリプトームの比較解析から得られた情報を解析することで、上述したように実際に細胞競合に関与する遺伝子を明らかにできたことから補完できたと考えている。さらにこれらの結果から得られたNADの関与や、細胞競合における特異的な液性因子の関与は、本細胞競合系において全く未知のファクターであり、新たな分子メカニズムの提唱が期待できる。さらに、トランスクリプトーム解析から得られた遺伝子が(2)candidateアプローチで焦点を当てているASK1-p38経路と関係することを示唆する結果も得ており、(ii)の液性因子も含めて、それぞれの相互作用の解析が進めば(1)網羅的解析と(2)candidateアプローチの解析が有機的に繋がった研究に発展すると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究結果を受けて、トランスクリプトーム解析から得られた遺伝子については細胞競合に関与する分子メカニズムをより詳細に解析していく。特に同定した液性因子については、MDCK細胞の変異細胞で発現上昇が見られるが、この液性因子が共存する正常細胞に受容されて細胞競合が起こるという仮説の検証を進めていく。最近、細胞競合が変異細胞に対する正常細胞からの圧迫という物理的な力に依存するという報告もあることから、このような細胞の動きなどに着目した解析も行う。Candidateアプローチで関与を確認したASK1-p38経路については、網羅的解析で新たに同定した遺伝子との関連、例えばシグナル伝達における互いの上下関係などに着目して解析を行い、網羅的解析とcandidateアプローチの研究結果を統合的に理解し、細胞競合現象の理解につなげる。
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Research Products
(18 results)