2017 Fiscal Year Annual Research Report
ステムセルエイジングに伴う発がんメカニズムの数理的解明
Project Area | Establishing a new paradigm of the pathogenesis of diseases through the understanding of stem cell aging |
Project/Area Number |
26115006
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
波江野 洋 九州大学, 理学研究院, 助教 (70706754)
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Project Period (FY) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 発がん過程 / 数理モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
幹細胞を頂点とした階層構造を持つ組織を数理モデリングによって仮想的に構築し、細胞の特性を表すパラメータを網羅的に変化させることで、組織破綻に対する頑強性の評価をモンテカルロ法を用いた確率シミュレーションによって実施した。前年度に引き続いて、細胞の特性変化に依存した組織変容までにかかる時間の理論式導出を行った。さらに、造血組織や大腸組織、脳組織など特定の組織構造において、実験データに基づいたパラメータを収集し、重要となる特性変化の解明を行っている。これまでの結果として、分化した細胞の分裂回数と細胞の数が多いと幹細胞における突然変異の蓄積率が低くなりがん発症までの待ち時間が長くなること、複数の突然変異が必要となる場合においては、幹細胞の数が大きい方ががん発症までの待ち時間が短くなることがわかった。これらの結果によって、正常細胞ががん細胞に変性するために必要となる突然変異の数と組織構造の複雑さに関する関係性を明らかにすることが出来た。特に造血組織はがん発症までに必要となる突然変異の少ないことから、分化した細胞の分裂率を高くし、分化した細胞の数を多くすることによってがん発症を遅らせていることを示すことができた。 これらの研究の一部として、膵臓におけるがん進展に関する論文をCancer Res誌(Jun 15;77(12):3325-3335.)に脳腫瘍におけるがん進展に関する論文をPLoS Comput Biol誌(Jan 2;14(1):e1005924.)に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
組織変容メカニズムの普遍的な原理抽出に向けた理論解析と、具体的な組織における重要な細胞特性変化の解明に向けて計画通り進めている。これまでの結果を国際誌に2報発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果をまとめて、組織変容の原理に関する学術論文を発表する。さらに、造血組織や腸上皮組織における実験データと共に組織特有のがん発生機構に関する学術論文を発表する。
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Research Products
(4 results)