2017 Fiscal Year Annual Research Report
老化ストレスシグナルによる腸管上皮幹細胞制御機構の解明
Project Area | Establishing a new paradigm of the pathogenesis of diseases through the understanding of stem cell aging |
Project/Area Number |
26115007
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐藤 俊朗 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (70365245)
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Project Period (FY) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 大腸癌 / 炎症性腸疾患 / オルガノイド / 幹細胞 / 老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
腸管上皮細胞は腸内細菌や食餌抗原などの様々な異物に対するバリアーとなるとともに,‘生理的炎症’に常に曝されている。このような過酷な環境において,腸管上皮幹細胞は遺伝子変異やエピゲノム変化を加齢とともに蓄積していくと考えられる。このようなステムセルエイジングは,加齢に伴う大腸がんの発症率上昇や潰瘍性大腸炎のがん化に寄与すると考えられる。我々は,通常の大腸がんも含め,慢性的な炎症ストレスシグナルがステムセルエイジングを介した発がんを導くと考え,本研究を考案した。佐藤らはこれまで不可能であった腸管上皮幹細胞培養技術の開発に成功し,幹細胞の加齢現象を細胞生物学的に追及することができる(Nature 2009, Nature Medicine 2011)。 既に,ヒト腸管上皮幹細胞はマウスに比し細胞ストレスに対して高い感受性をもつことを見出しており(Gastroenterology 2011),長寿命であるヒトの組織を用いたステムセルエイジング研究に着目した。本研究は加齢に伴う腸管上皮幹細胞の(エピ)ゲノム・トランスクリプト―ム変化と幹細胞機能異常を包括的に理解し,加齢を誘導する分子およびシグナル機構を解明することを目的とする。ヒト大腸がんや正常大腸上皮からオルガノイドライブラリーを構築し,様々な年齢や疾患を有するオルガノイドの包括的な分子プロファイルを取得した(Cell Stem Cell 2015). また,ヒト大腸オルガノイドのマウスへの同所異種移植システムを確立し,幹細胞の組織内の動態を観察するプラットフォームを開発した.その結果,マウスに比して,ヒトの大腸上皮幹細胞は細胞増殖スピードが遅いことを見出した.さらに,様々な年齢の潰瘍性大腸炎患者の大腸オルガノイドの作製と遺伝学的解析を行った.こうしたデータは,加齢や炎症ストレスが大腸上皮幹細胞にどのような生物学的な変動をもたらすかを知る鍵になると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
潰瘍性大腸炎患者及び健常者の臨床大腸粘膜サンプルを用い,クローン化した大腸オルガノイドを15検体樹立した.さらに,それぞれのクローンの全エキソーム解析を行い,加齢に伴う遺伝子変異の蓄積について分子遺伝学的な解析を行った.これらの解析から加齢に伴ったところ,大腸がんを併発した潰瘍性大腸炎患者では遺伝子変異が多い傾向にあり,発がん症例を優先的にリクルートし,クローン化大腸オルガノイド作製を継続して行った.さらに,併発した大腸がん部分からもオルガノイドを作製することにより,加齢や慢性炎症によって蓄積する遺伝子変異と発がん遺伝子の相同性について解析を行っている. 慢性炎症と加齢によって生じる遺伝子変異としてTP53変異に注目し,VillinCreER/RosaLacZ/TP53fl/flマウスの作成を行った.本マウスに Dextran Sodium Sulfate(DSS)投与を行い,TP53変異腸管上皮クローンの腸炎による領域拡大への寄与を検討した。また,DSSによる慢性炎症の大腸発がんへの寄与を解析している.
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Strategy for Future Research Activity |
研究は計画通り進んでおり,また,当該研究室でこれまでに蓄積されたオルガノイド技術のノウハウを有効利用することにより,順調に研究を推進できると考えている。また,ヒト疾患におけるステムセルエイジングの関与を臨床サンプルを用いた研究手法から解明していく。
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[Journal Article] Cell competition with normal epithelial cells promotes apical extrusion of transformed cells through metabolic changes2017
Author(s)
Kon S, Ishibashi K, Katoh H, Kitamoto S, Shirai T, Tanaka S, Kajita M, Ishikawa S, Yamauchi H, Yako Y, Kamasaki T, Matsumoto T, Watanabe H, Egami R, Sasaki A, Nishikawa A, Kameda I, Maruyama T, Narumi R, Morita T, Sasaki Y, Enoki R, Honma S, Imamura H, Oshima M, Soga T, Miyazaki JI, Duchen MR, Nam JM, Sato T, et al.
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Journal Title
Nature Cell Biology
Volume: 19
Pages: 530-41
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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