2014 Fiscal Year Annual Research Report
mRNAとタンパク質の品質管理機構における新生鎖の新規機能の解明
Project Area | Nascent-chain Biology |
Project/Area Number |
26116003
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
稲田 利文 東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (40242812)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長尾 翌手可 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30588017)
岩川 弘宙 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (60710415)
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Project Period (FY) |
2014-06-27 – 2019-03-31
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Keywords | mRNA品質管理 / リボソーム / 新生鎖 / ユビキチン化 / 翻訳アレスト / プロテアソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
翻訳途上の新生ポリペプチド鎖(新生鎖)は、細胞全体の生命現象の制御と調節に重要な役割を果たす。研究代表者は、mRNA品質管理品質管理機構を解析し、異常なmRNA由来の新生ポリペプチド鎖の新規分解機構とmRNA切断における新生鎖の機能を明らかにした。連続した塩基性配列を持った新生鎖が翻訳伸長反応を停止(翻訳アレスト)させる結果、mRNA切断と新生鎖のユビキチン化とプロテアソームによる迅速な分解が起こる。本研究課題では、遺伝子発現の正確性を保証するmRNAとタンパク質の品質管理機構における、新生鎖の新規機能と新生鎖の運命決定機構の解明をめざし、以下の項目を解析した。①特異的配列を持つ新生鎖による翻訳アレストの分子機構、②翻訳アレストによる新生鎖分解とmRNA切断におけるE3ユビキチンライゲースHel2の機能解析、③フォールディングか分解かの新生鎖の運命決定機構とmRNA品質管理因子の機能。その結果、異常新生鎖による翻訳アレストに必須な因子を出芽酵母の遺伝学を用いて同定した。その結果、翻訳伸長途中で停滞した80Sリボソームに結合するE3ユビキチンライゲースであるHel2が40Sリボソームタンパク質を特異的にユビキチン化することが、翻訳伸長阻害が原因で起こるmRNA(NGD)と新生ポリペプチド鎖(RQC)に対する品質管理機構に必須であることを見出した。また、研究分担者の岩川は、RISCによる切断または翻訳アレストを受けたmRNA上のリボソーム、および新生鎖のその後の運命を生化学的に解析する基盤となる動植物のセルフリー系を確立した。長尾は、細胞内ぺプチジルtRNAを質量分析によって解析することで、翻訳初期段階においてフレームシフトやミスデコーディングによってリボソーム上で誤って産生されたぺプチジルtRNAが積極的にリボソームから脱離される機構がある可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究代表者は2005年以降、一貫して翻訳伸長(タンパク質の合成途中)段階での異常を認識する品質管理機構を一貫して解析して来た。1)終止コドンを持たない異常mRNAでは3’末端のpoly(A)鎖まで翻訳が進行する結果、ポリリジン鎖が合成され、この連続した塩基性アミノ酸配列が翻訳伸長阻害とタンパク質の分解を引き起こすことを明らかにした(EMBO J., 2005; Genes Dev., 2007; JBC, 2009; EMBO Rep., 2010)。この発見を契機に、複数の欧米の有力研究室が翻訳伸長阻害に起因する品質管理機構の解析を開始し、分子機構の解明が急速に進んだ(Nature, 2010; Cell 2012; Mol. Cell, 2012; Mol. Cell, 2014; Science 2015)。現在では、翻訳伸長途中で停滞した80Sリボソームは、各サブユニットに解離し、60Sサブユニット上の新生ポリペプチド鎖(peptidyl-tRNA)がE3ユビキチンライゲースであるListerinによってユビキチン化された後にプロテアソームによって迅速に分解される分子機構が明らかになっている。本計画研究において研究代表者は、停滞した80Sリボソームに結合するE3ユビキチンライゲースであるRQT1によるリボソーム上の標的因子のユビキチン化が必須であることを見出した(論文投稿中)。この知見は世界初であり、翻訳伸長複合体の運命決定機構を解明のみでなく、ユビキチン化の全く新規な機能を解明した点でも特筆すべき研究成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進んでおり、大きな問題はない。平成27年度の研究計画は以下である。 (1)特異的配列を持つ新生鎖による翻訳アレストの分子機構:試験管内翻訳系を用いて新生鎖による伸長反応の制御機構を明らかにする。(2)翻訳アレストによる新生鎖分解とmRNA切断におけるE3ユビキチンライゲースHel2の機能解析:翻訳アレスト状態のリボソームをHel2が認識し品質管理へと導く機構を明らかにする。Hel2によるユビキチン化の標的因子の同定と、ユビキチン化の機能を解析する。(3)翻訳アレストに起因するmRNAと新生鎖の品質管理機構の普遍性:①使用頻度の低いコドンによる翻訳アレストや②RISC(miRNA-Induced Silencing Complex)等による物理的なリボソームの阻害による品質管理機構を明らかにし、特異的な新生鎖による品質管理機構の普遍性を明らかにする。(4)フォールディングか分解かの新生鎖の運命決定機構とmRNA品質管理因子の機能:異常mRNA由来の異常新生鎖と相互作用し、分解かフォールディングかの運命を決定するシャペロン因子の機能を明らかにする。研究分担者の長尾は、rRNAやtRNA修飾がその機構にどのように関わっているかなど分子メカニズムについて追究する。研究分担者の岩川は、昨年度確立したセルフリー系を用いてRISCによる翻訳アレストの分子機構の解析を行う。
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