2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Nascent-chain Biology |
Project/Area Number |
26116004
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田中 元雅 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (40321781)
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Project Period (FY) |
2014-06-27 – 2019-03-31
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Keywords | 翻訳 / リボソーム / ゲノミクス / RNA |
Outline of Annual Research Achievements |
mRNAの翻訳は全ての細胞において生命活動の中心をなすが、その分子レベルでの実体の詳細にはいまだ不明な点が多い。本年度は、mRNAの翻訳過程を一塩基の分解能で詳細に明らかにするための手法の開発を目指した。出芽酵母細胞の同一試料から、翻訳最中のリボソームに結合したRNAをスクロース勾配実験などによって単離、精製し、それらを増幅してライブラリーを作成するためのプラットフォームを確立させた。比較として、全く同じ酵母抽出液から、細胞質全体からのRNAも同じ試料から調製した。それらの配列を次世代シーケンサーで網羅的に読み、膨大な配列データのゲノム配列へのマッピングを行った。本年度はこれら一連の実験手順を確立させ、再現性の高いデータを取ることに成功した。これらのRNAの配列解析から、様々な転写後修飾の存在を明らかにするとともに、翻訳に使われるコドンを解析するためのデータ解析手法を確立させた。mRNA翻訳の阻害は様々な細胞の状態の変化や疾患とも関連している。しかし、翻訳阻害がどのようなメカニズムで起こっているのかの詳細はいまだ不明な点が多い。そこで、本年度は、翻訳阻害を起こすことが知られている様々なストレス条件下において本手法を用いて解析を行った。その結果、翻訳阻害のメカニズムを明らかにできる分子バイオマーカーを見出した。また、これらの実験手法に様々な改良を加え、出芽酵母だけでなく、哺乳動物細胞を用いた本技術のプラットフォームの確立も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りに現在までの研究が進み、論文投稿に近いところまで到達できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに開発してきた翻訳解析手法をさらに発展させ、ストレス条件下の細胞や神経変性・精神疾患モデル神経細胞、マウスにおける翻訳の変化をモニターし、翻訳メカニズムの詳細を明らかにしていく。ストレス条件下での解析については、現在見出してきている現象をさらに詳しく調べていくと共に、翻訳阻害の根源となると予想している遺伝子の欠損酵母株などを用いて分子レベルで翻訳阻害メカニズムを明らかにする。さらには、本年度は、約50年前にクリックが提唱したがその実験的証拠のない「揺らぎ仮説」について、本手法を用いて実験的検証を行うための翻訳解析手法を確立させる。それにより、これまでに不明な、翻訳における真のコドン使用率を明らかにすることを目指す。また、神経細胞での翻訳解析についても詳細に調べていく予定である。
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