2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Prevention of brain protein aging and dementia |
Project/Area Number |
26117002
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
祖父江 元 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任教授 (20148315)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 宏久 名古屋大学, 脳とこころの研究センター, 特任教授 (10378177)
|
Project Period (FY) |
2014-07-10 – 2019-03-31
|
Keywords | MRI / PET / 認知症 / 加齢 / ネットワーク / 高次脳機能 / タンパク質 / 老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳の老化タンパク質をPETで可視化する技術の進歩は目覚ましいものがある。アルツハイマー病のPET画像では発症30年以上前からAβ蓄積が生じていることが示されており、既に予防的介入を行う治験も始まっている。一方、広範なAβの蓄積があるにもかかわらず死亡まで臨床症状を呈さない症例も数多くあることが判明し、老化タンパク質の蓄積がどのように神経機能・神経回路破綻を引き起こし、認知症を引き起こすのかを解明することが重要な課題となっている。 本研究では認知症にかかわる重要な脳タンパク質が、健常高齢者や認知症・神経変性疾患のat risk例において、どのように老化変性して認知症に至るのかを病変の可視化に基づいて示し、ヒトタンパク質老化の過程を解析することを目的としている。さらに、タンパク質老化に打ち勝つ人々の臨床画像特徴解明に務め、経時的臨床像、各種バイオリソースとの関係も検討する。 平成26年度は、多数の健常高齢者によるコホートを作成し、高次脳機能検査、コネクトーム解析(安静時脳機能MRI、安静時MEG、64軸拡散テンソル画像等)、脳容積画像、採血を脳とこころの研究センターにて行った。申込み者は249日で405名、撮像は254名を終え、DNAも95%以上で確保した。200名の時点における予備的な解析では、加齢に伴って脳容積画像で萎縮する領域、拡散MRIで障害される白質領域を見出す一方で、安静時機能的MRIではむしろ領野間の結合が上昇することや、認知機能の低下と関連する特定のネットワーク候補を見出した。 脳タンパク質の可視化を目指す研究においては、谷内グループと協力の下、病的なタウタンパク質(THK-5351)やβアミロイドを対象とした高感度タンパク質PETイメージングの名古屋大学への導入を進めた。技術移転は順調に進み、撮像可能な状態がほぼ整備された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
健常高齢者と、軽度認知障害(MCI)を対象として、神経回路がどのように老化変性し、神経変性から認知症に至るのかを解析できる健常高齢者および患者前向きコホートを構築することを目的としているが、コホートは順調に構築が進んでおり、全例で高次脳機能検査、頭部MRI・MEGによるコネクトーム解析、脳容積画像を施行するとともに、95%において採血を実施し、DNAおよび血清を保存することが出来た。 横断像の検討では、脳容積画像では、加齢とともに辺縁系を中心とした萎縮を認め、TBSS解析では加齢とともに脳室周囲白質の障害を認めた。安静時脳機能的MRIもちいた独立成分分析では各安静時ネットワークは良く保たれていたが、90箇所設定した関心領域間の結合と加齢との関係を検討した解析では、加齢に伴い結合の増加する領域を減少する領域よりも多く認めた。また健常コホートの中で軽度認知障害を認めた症例の海馬に関心領域を設定したseed based analysisでは、健常者に比べ、海馬と前頭眼野や前方帯状回との結合低下を認めた。また高次脳機能検査(ACE-R)スコアとネットワークとの検討では、特に頭頂後頭葉や側頭後頭葉と他領域とのネットワーク障害がACE-Rの低下と相関していた。一連の結果は、加齢に伴って、脳萎縮や解剖学的白質回路の障害が生じても、機能的回路の結合の増加が代償することで脳機能を維持している可能性や、多領域と関連するハブ領域が障害されると高次脳機能障害の出現する可能性が示唆された。以上の結果から、ヒトの脳内では加齢に伴って比較的特定の機能的神経回路が変化することで脳機能を維持している可能性が考えられた。 さらに、名古屋大学においてタウとアミロイドβを可視化する高感度タンパク質PET導入を大きく推進することが出来た。
|
Strategy for Future Research Activity |
認知症にかかわる重要なタンパク質が、健常高齢者や認知症・神経変性疾患のat risk例において、どのような分布の違いを示し、さらに老化変性して認知症に至るのかを神経回路や高次脳機能との関係を踏まえつつ病変の可視化に基づいて示すことが出来るよう研究を進める。ヒトタンパク質老化の過程の解析を進め、タンパク質老化に打ち勝つ人々の臨床画像特徴解明を進めるためには、大規模健常高齢者を対象として、高次脳機能検査、MRI・MEGコネクトームデータ(安静時脳機能MRI・MEG、64軸拡散テンソル画像等)、DNA、血清を経時的に収集していく必要があるため、引き続き1000名を目標にデータの収集に努めていく。また、高齢者、at rsik症例、早期認知症症例を対象に、高感度タンパク質PET撮像も積極的進め、タンパク質集積と神経回路(解剖学的、機能的)の関係を明らかにする。特に、病的タンパク質蓄積にもかかわらず、認知機能の保持されている例における神経回路の状態と、同様の蓄積がありながら認知症を呈している症例の神経回路の状態を比較することは、タンパク質老化に打ち勝つ病態解明に寄与すると期待される。さらに縦断的なコネクトーム画像を行い、経時的な、神経回路、高次脳機能などの変化を多面的に解析し、縦断的なコネクトーム画像とPET所見の観察から、コネクトームの変化、各タンパク質の経時的脳内分布および蓄積量の変化、タンパク質同士の関係、タンパク質と脳機能、脳萎縮、臨床的重症度との関連性を検討するとともに、先制治療の介入時期などを解明していく。また、次世代シーケンサーを用いて既知の認知症、神経変性疾患関連遺伝子の網羅的シーケンスを行い、遺伝子異常・多型と臨床像、画像との関連を解析出来るよう、また、大規模プロテオーム解析につながるよう、遺伝子、血漿データの収集に努める。
|
-
-
[Journal Article] Brugada syndrome in spinal and bulbar muscular atrophy.2014
Author(s)
Araki A, Katsuno M, Suzuki K, Banno H, Suga N, Hashizume A, Mano T, Hijikata Y, Nakatsuji H, Watanabe H, Yamamoto M, Makiyama T, Ohno S, Fukuyama M, Morimoto S, Horie M, Sobue G.
-
Journal Title
Neurology.
Volume: 82
Pages: 1813-1821
DOI
Peer Reviewed
-
-
[Journal Article] Paeoniflorin eliminates a mutant AR via NF-YA-dependent proteolysis in spinal and bulbar muscular atrophy.2014
Author(s)
Tohnai G, Adachi H, Katsuno M, Doi H, Matsumoto S, Kondo N, Miyazaki Y, Iida M, Nakatsuji H, Qiang Q, Ding Y, Watanabe H, Yamamoto M, Ohtsuka K, Sobue G.
-
Journal Title
Hum Mol Genet.
Volume: 23
Pages: 3552-3565
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-
-
-
-
-