2016 Fiscal Year Annual Research Report
核酸代謝の乱れからみた蛋白質の老化基盤とその排除機構
Project Area | Prevention of brain protein aging and dementia |
Project/Area Number |
26117006
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
小野寺 理 新潟大学, 脳研究所, 教授 (20303167)
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Project Period (FY) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症 / 前頭側頭葉変性症 / TDP-43 |
Outline of Annual Research Achievements |
認知症を引き起こすタンパク質は,生理的に存在するが,老化と共に、特定の神経システムにおいて病原性をもったタンパク質へと変遷し蓄積する.この課程には,“タンパク質の量的,質的な変化"を伴う.タンパク質の量は,産生と分解により制御され,産生はmRNA により,また分解は細胞内の分解機構と,細胞外への排出機構により制御される.質的な変化は,翻訳後修飾やpolyA結合部位の選択や,選択的スプライシングによるRNAの多様性により引き起こされる.老化では,この産生,分解,質が変遷し,病原性を持つタンパク質への引き金を引くと考え,これを検討する.特に神経システムの特性を決定する多様なRNAの制御機構に注目する.RNAの制御異常遺伝子と神経疾患の関わりや 前頭側頭葉変性症関連タンパク質における選択的スプライシング体の構成比率の異常等の近年明らかとされた事実は,加齢性神経疾患の共通の分子病態機序としてRNA制御機構の破綻,乱れの存在が示唆されている. 本研究は,神経疾患の病因タンパク質の老化を,その神経システム特異的なRNA制御機構の破綻の面から明らかとし,これを標的とした治療法の開発を目的とする.我々は,前頭側頭型認知症や筋萎縮性側索硬化症の原因となるTDP-43について,そのRNA制御を介した自己タンパク質量制御機構を検討し.その結果,核内のTDP-43がTDP-43 mRNAの選択的polyA 結合部位を変化させTDP-43 mRNAの細胞内局在と,選択的スプライシングを介したナンセンス依存性mRNA分解機構によって,その量を調節していることを明らかとした.次に,筋萎縮性側索硬化症の,核内TDP-43を失っている運動神経細胞にて,TDP-43 mRNAの細胞内局在が異なることを見出した.これらの細胞では量調節が機能していないことを明らかとした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までRNAの乱れについて順調に成果を上げており、本年度は論文発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの成果で加齢性神経変性疾患において,RNA代謝機構が乱れていることを示し,さらにvivoモデルにてスプライシング部位を標的とした核酸を投与することにより,内在性TDP-43 mRNA制御機構を乱すことで,TDP-43タンパク質の量を増加させ,断片化を引き起こし,かつアポトーシスを誘導することに成功した.この成果を更に発展させ,得られた疾患モデルに対して,より詳細な生化学的,免疫組織化学的な解析を加える. さらに,ヒトとマウスでは,この制御関連領域の塩基配列が異なるため,ヒトiPS由来の神経細胞にて,同様に制御機構を乱し解析する.次に,この背景にあるRNA制御機構の揺らぎ,乱れの背景となるゲノム多型の有無について解析を加える.具体的には,患者罹患組織での疾患関連遺伝子のコピー数,体細胞レベルでの,一塩基レベルでの変化,もしくは特定の遺伝子配列の挿入について検討する.また,排除機構についてはTGF-βシグナルの亢進がその背景にあることが示唆されたので,亢進する背景について検討する.既に,モデル動物にて,亢進の引き金となるタンパク質の蓄積を見出しており,この解析と,薬物による介入を行う.組織特異的なスプライシングとその破綻を検証するには,患者罹患組織でのスプライシング因子のゲノムへの結合状態を検討する意義は極めて大きい.ヒト剖検組織に対して,本方法を可能とするサンプルの処理方法については今年度から検討を加える.変更点として,疾患モデルを作成し,仮説を立証する内容を追記した.すでに,良好な結果を得ており,十分に可能である.さらに近年,爆発的に進んでいるゲノム編集技術を用いて,このRNA代謝のゆらぎの背景にあるであろう,遺伝子の多様性について検証することを加えた.また,これら老化蛋白の排出機構の重要性が明らかとなりその検討を加えた.
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Clinicopathological characteristics of patients with amyotrophic lateral sclerosis resulting in a totally locked-in state (communication Stage V).2016
Author(s)
Hayashi K, Mochizuki Y, Takeuchi R, Shimizu T, Nagao M, Watabe K, Arai N, Oyanagi K, Onodera O, Hayashi M, Takahashi H, Kakita A, Isozaki E.
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Journal Title
Acta Neuropathol Commun.
Volume: 30
Pages: 107
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Heterogeneity of cerebral TDP-43 pathology in sporadic amyotrophic lateral sclerosis: Evidence for clinico-pathologic subtypes.2016
Author(s)
Takeuchi R, Tada M, Shiga A, Toyoshima Y, Konno T, Sato T, Nozaki H, Kato T, Horie M, Shimizu H, Takebayashi H, Onodera O, Nishizawa M, Kakita A, Takahashi H.
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Journal Title
Acta Neuropathol Commun.
Volume: 23
Pages: 61
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Increased cytoplasmic TARDBP mRNA in affected spinal motor neurons in ALS caused by abnormal autoregulation of TDP-43.2016
Author(s)
Koyama A, Sugai A, Kato T, Ishihara T, Shiga A, Toyoshima Y, Koyama M, Konno T, Hirokawa S, Yokoseki A, Nishizawa M, Kakita A, Takahashi H, Onodera O.
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Journal Title
Nucleic Acids Res.
Volume: 44
Pages: 5820-5836
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Distinct molecular mechanisms of HTRA1 mutants in manifesting heterozygotes with CARASIL.2016
Author(s)
Nozaki H, Kato T, Nihonmatsu M, Saito Y, Mizuta I, Noda T, Koike R, Miyazaki K, Kaito M, Ito S, Makino M, Koyama A, Shiga A, Uemura M, Sekine Y, Murakami A, Moritani S, Hara K, Yokoseki A, Kuwano R, Endo N, Momotsu T, Yoshida M, Nishizawa M, Mizuno T, Onodera O.
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Journal Title
Neurology.
Volume: 86
Pages: 1964-1974
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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