2015 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトiPS細胞と霊長類モデルを用いた治療開発の基盤整備
Project Area | Prevention of brain protein aging and dementia |
Project/Area Number |
26117007
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岡野 栄之 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (60160694)
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Project Period (FY) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | iPS細胞 / ゲノム編集 / マーモセット |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、R406Wタウ遺伝子変異をもつFTDP-17家系の患者2名よりiPS細胞の樹立を行った。数十クローンを拾った後、継代によるエピソーマルベクター消失、未分化能の維持、正常核型の保持を指標とし、それぞれの患者につき3クローンずつ選別した。さらに、それぞれの患者由来iPS細胞から、CRISPR/Cas9のゲノム編集技術を用いて、患者の遺伝的背景で野生型Tau遺伝子をもつiPS細胞を作製した。次に、これらのiPS細胞クローンから、低分子化合物を用いてWntシグナル伝達系の制御を行うことで、大脳皮質神経細胞への二次元分化誘導系やオルガノイド誘導系を確立した。今後、タウ変異を持つiPS由来神経細胞での分子生物・生化学的解析、及び細胞生物学的な病態表現型を検討していく。 タウオパチーin vivoモデルとして、独自の遺伝子改変技術を駆使し、変異型タウ遺伝子を発現するトランスジェニックマーモセットの作出を行っている。まず、FTDP-17家系で同定されたP301L変異を持つタウ遺伝子を、神経細胞特異的及びテトラサイクリン誘導依存的に発現させるレンチウイルスベクターを構築し、高力価のレンチウイルスを得た。マーモセット初期胚へ感染させた後、変異型タウと2A配列で繋げたKusabira Orange(KO)の蛍光発現を外来遺伝子導入の指標としたが、このレンチウイルス系では蛍光が確認された初期胚は得られなかった。したがって、発現調節の様式を変更し、P301S変異を持つタウ遺伝子を恒常的に発現するレンチウイルスベクターを再構築した。このレンチウイルスを産生し、マーモセット初期胚への感染を行ったところ、KOの蛍光を示す外来遺伝子の導入のみられた初期胚が複数得られた。現在、この変異タウを発現する初期胚を仮親のマーモセット子宮へ移植し、トランスジェニックマーモセット作出を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通り、R406Wタウ遺伝子変異をもつFTDP-17家系の患者2名よりそれぞれ3クローンずつiPS細胞を樹立することに成功した。これらのiPS細胞が正常な多能性幹細胞としての性質を有すること、また正常核型を維持することを性状解析により確認した。更に、CRISPR/Cas9のゲノム編集技術を用い、タウ遺伝子を健常型へと修復したIsogenic iPS細胞株の作出も成功した。これらの細胞は、今後の解析において同一の遺伝的背景を有するコントロール細胞株として重要な役割を果たすことが期待される。以上から、今後の表現型解析に必要な材料の調製が完了しており、概ね順調に研究が進行していると言える。 更に、上記に並行し今後の表現型解析に必要となる、iPS細胞からの大脳皮質ニューロンの分化誘導系について改良を進めた。従来の2次元培養系に加え、より成熟したニューロンが得られるとされる3次元培養系も確立した。 また、変異型タウを発現するトランスジェニックマーモセットの作出においても進捗があった。従来使用していた薬剤誘導型発現系においては、レンチウイルスベクター感染の指標としている蛍光タンパクの発現誘導が確認されず、移植には至らなかった。そこで、計画を変更し、ユビキタスプロモーターにより発現するコンストラクトへ再構築を行った。このコンストラクトを用い、レンチベクターを産生し、マーモセット初期胚への感染を再度試みた。その結果、蛍光を示す初期胚を複数得ることに成功した。これらの胚を妊娠マーモセット子宮へ移植を行い、個体作出を試みるに至っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では患者iPS細胞由来神経細胞を用いた in vitro モデル系の構築、及びトランスジェニック霊長類作出技術を用いた in vivo 疾患モデル系を構築する。更に、これらの独立したモデル系を相互に連携させることで、脳タンパク質老化の分子機構から認知症発症に至る全体像を明らかにし、治療開発に繋げる。 1) 疾患ヒト iPS 細胞の神経細胞への分化誘導及び解析 上述の通り、平成27年度にタウオパチーin vitroモデルとして、R406Wタウ遺伝子変異をもつFTDP-17家系の患者2名よりiPS細胞を樹立した。更に、このiPS細胞についてCRISPR/Cas9のゲノム編集技術を用い、R406W変異を野生型に修復した Isogenic iPS細胞の作製を完了した。これらのiPS細胞を、平成27年度までに確立した神経分化誘導法により神経細胞へと分化させ、分子生物・生化学的解析、及び細胞生物学的な病態表現型を検討する。具体的には、リン酸化状態の検討、細胞内局在の解析、神経突起長の測定等を行い、isogenic control と比較することでR406W変異による表現型を解析する。加えて、CRISPR/Cas9のゲノム編集技術を用い、R406W変異を両アリルに持つホモ変異型タウiPS細胞の作製を行う。この細胞は、ヘテロ型に比較してより強い表現型を示すことが期待されるため、ヘテロ型及び野生型との比較を試みる。 2) 変異型タウ・トランスジェニックマーモセットの作成及び解析 平成27年度に一部改良を施したレンチウイルスベクターを用い、マーモセット受精卵への感染及び仮親への子宮移植を行っている。既に移植した胚について、産仔が得られ次第、遺伝型の解析を行う。また、引き続きファウンダー個体作出へ向け、受精卵への感染及び移植を行う。
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[Journal Article] Establishment of In Vitro FUS-Associated Familial Amyotrophic Lateral Sclerosis Model Using Human Induced Pluripotent Stem Cells.2016
Author(s)
Ichiyanagi N, Fujimori K, Yano M, Ishihara-Fujisaki C, Sone T, Akiyama T, Okada Y, Akamatsu W, Matsumoto T, Ishikawa M, Nishimoto Y, Ishihara Y, Sakuma T, Yamamoto T, Tsuiji H, Suzuki N, Warita H, Aoki M, Okano H.
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Journal Title
Stem Cell Reports.
Volume: 6
Pages: 496-510
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Differentiation of multipotent neural stem cells derived from Rett syndrome patients is biased toward the astrocytic lineage.2015
Author(s)
Andoh-Noda T, Akamatsu W, Miyake K, Matsumoto T, Yamaguchi R, Sanosaka T, Okada Y, Kobayashi T, Ohyama M, Nakashima K, Kurosawa H, Kubota T, Okano H.
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Journal Title
Mol Brain.
Volume: 8
Pages: 1
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] I2020T mutant LRRK2 iPSC-derived neurons in the Sagamihara family exhibit increased Tau phosphorylation through the AKT/GSK-3β signaling pathway.2015
Author(s)
Ohta E, Nihira T, Uchino A, Imaizumi Y, Okada Y, Akamatsu W, Takahashi K, Hayakawa H, Nagai M, Ohyama M, Ryo M, Ogino M, Murayama S, Takashima A, Nishiyama K, Mizuno Y, Mochizuki H, Obata F, Okano H.
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Journal Title
Hum Mol Genet.
Volume: 24
Pages: 4879-4900
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Rapid, efficient, and simple motor neuron differentiation from human pluripotent stem cells.2015
Author(s)
Shimojo D, Onodera K, Doi-Torii Y, Ishihara Y, Hattori C, Miwa Y, Tanaka S, Okada R, Ohyama M, Shoji M, Nakanishi A, Doyu M, Okano H, Okada Y
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Journal Title
Mol Brain.
Volume: 8
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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