2017 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトiPS細胞と霊長類モデルを用いた治療開発の基盤整備
Project Area | Prevention of brain protein aging and dementia |
Project/Area Number |
26117007
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岡野 栄之 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (60160694)
|
Project Period (FY) |
2014-07-10 – 2019-03-31
|
Keywords | iPS細胞 / ゲノム編集 / マーモセット |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に引き続き、R406W変異型タウ遺伝子を有するFTDP-17 iPS細胞由来神経細胞における表現型の解析を実施した。健常人由来iPS細胞株とR406Wヘテロ型変異iPS細胞株に加え、ゲノム編集技術(CRISPR/Cas9)を用いて、変異が修復された対照株と変異を両アレルに持つホモ型変異株を作出し、各々を大脳皮質興奮性神経細胞に分化させた後に、表現型の比較検討を行った。 表現型解析について、まず変異型タウタンパク質における異常の検出を行った。中でも、タウ病変との関連が示唆されている、タウタンパク質における異常リン酸化について検討を行った結果、特定のアミノ酸のリン酸化レベルの異常が認められた。更に、疾患患者由来神経細胞では断片化したタウが増加していることが明らかになった。この断片化に関わるプロテアーゼについても検討を行い、同定した。 次に、変異型タウによる神経変性の徴候の有無を検討した。βIII-tubulinやタウ抗体の染色を行った結果、変異型株由来神経細胞においては軸索の微小管の異常が認められ、正常株由来神経細胞と比べ、粒状構造体 (puncta)が有意に増えていたことが分かった。これらの現象は、前年度検出したタウの樹状突起への局在異常と相関して起こっていることも明らかとなった。 変異型タウ遺伝子トランスジェニックマーモセットの作出については、P301S変異タウ発現レンチウイルスベクターをマーモセット初期胚へ感染させたものの、発生毒性が示唆された。そこで、内在性タウに対し、ゲノム編集によるP301S変異の導入を試みる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R406W変異型タウ遺伝子を有するFTDP-17 iPS細胞由来神経細胞における表現型の解析を実施し、リン酸化タウ抗体を用いてウェスタンブロットを試みたところ、R406W変異型株由来神経細胞においては、特定のアミノ酸におけるリン酸化レベルが低下しているなどリン酸化の異常が確認された他、35~40kDaのタウ断片が変異型株由来神経細胞において増加していることが示された。さらに、様々なプロテアーゼ阻害剤を加えて検証した結果、一部のタウ断片はカルパインによる分解物であることを特定するに至った。また、ハイコンテンツ・イメージアナライザーを用いた解析からR406W変異型株由来神経細胞におけるタウタンパクの局在異常、及び軸索におけるpunctaの形成などの表現型を定量的に検出することに成功している。 変異型タウ遺伝子トランスジェニックマーモセットの作出については、前年度に引き続きP301S変異タウ発現レンチウイルスベクターを用いたマーモセットトランスジェニック胚の作成を進めたものの、産仔を得るには至らなかった。過剰発現による発生毒性が示唆されたため、CRISPR-Cas9システムによるゲノム編集技術を用いた内在性タウへ変異の導入を試みており、ガイドRNA及びドナーDNAの設計を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度検出したR406W変異型タウ遺伝子を有するFTDP-17患者由来 iPS細胞由来神経細胞におけるタウのリン酸化や断片化などの異常が神経変性を引き起こすメカニズムについて追究していく。また、長期培養したiPS細胞由来神経細胞における表現型の解析を進めるとともに、iPS細胞から作出した脳オルガノイドの3Dイメージング方法を確立し、神経突起長及び構造などの解析を行う。更に、各種のストレスに対する応答性の変化を調べ、タウR406W変異iPS細胞由来神経細胞における脆弱性について検討を行う。 並行して、Washington Universityから入手したタウR406W変異及びタウP301L変異を有するFTDP患者由来線維芽細胞から新たにiPS細胞を樹立する。 変異タウマーモセットの作出については、設計したガイドRNA及びドナーDNAの性能評価を、マーモセットES細胞を用いて行う。
|
Research Products
(16 results)