2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Cognitive Interaction Design: A Model-Based Understanding of Communication and its Application to Artifact Design |
Project/Area Number |
26118006
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
今井 倫太 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (60348828)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 哲雄 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (40343389)
篠沢 一彦 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 知能ロボティクス研究所, 研究員 (80395160)
大澤 博隆 筑波大学, システム情報系, 助教 (10589641)
|
Project Period (FY) |
2014-07-10 – 2019-03-31
|
Keywords | ヒューマンエージェントインタラクション / 他者モデル / 相互適応 / 擬人化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、搭乗型や装着型の人工物が人と一体感を得た形でインタラクションする基盤となるモダリティを明らかにしたとともに、人と対面してインタラクションする擬人化エージェントに対して、人が他者モデルを抱き行動するデザインを明らかにした。 搭乗型人工物である電動車椅子では、ジョイスティックを頻繁に動かして速度調整を行うPWM操作と、ジョイスティックをある一定角度に保つことで速度制御を行うアナログ操作の二通りの操作方法に着目した。搭乗者が、電動車椅子の操作に困難さを感じているときはPWM操作が多くみられ、容易な場合は、アナログ操作が多くみられる。PWM操作とアナログ操作によって、車椅子の速度制御のゲインを変更することで、搭乗者に適応的に動く車椅子が構築可能であることが明らかになった。また、人間が自身の身体であるという認識する身体認知が、ユーザの操作と無関係に動作する自律ロボットに拡張するかどうかも検証した。動作の予測可能性が高いロボットアームは、予測性が低いロボットアームに比べて、ロボットアームを自身で操作している主観的項目が有意に高くなり、動作の予測可能性が、身体認知の拡張に寄与する可能性があることを示した。 また、擬人化エージェントに関しては、ロボットの動作に今性を与えるアーキテクチャを考案した。周囲の環境のイベントや人間の動きに反応したり、生理的な動作を表現したりする不随動作と、会話コンテンツに依存して意図的に行う随意動作を2段階で統合するシンプルなアーキテクチャを提案した。本アーキテクチャによって、低いコストで、人に他者モデルを抱かせるロボットが構築可能になった。また、人と複数台のロボットが適応的なインタラクションを行う際のデザインについても研究を行った。具体的には、2体のロボットが同調的な動作を行うことにより、人を引き込むことができ、視線や動作を誘導可能であることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、人と電動車椅子のインタラクションにおいて、ジョイスティックの操作から搭乗者の心的な状態を推測できるようになった点は大きな進展である。人・動物インタラクションにおいては、手綱や声かけ、視線といったモダリティを用いて人と動物が相互に適応していることが明らかになりつつあるが、人工物である電動車椅子の場合は、同種のモダリティの知見がそのまま適応できないという問題があった。しかし、本年度の成果によって、人の心的状態を車椅子側が推定することができるようになり、人と車椅子の間の相互適応や、人が車椅子に対してどのような他者モデルを抱いてインタラクションするのか本格的に研究が進められるようになるという大きな進展が見られた。 また、擬人化タイプのロボットの振る舞いに今性を持たせる研究では、ロボットの振る舞いに今性を持たせるための一般的なアーキテクチャの開発に成功している。従来、今性のあるロボットの振る舞いは、手作業で複雑なロジックを組んで実現されており、最初の設計だけでなく、新たな振る舞いの追加や変更を含めて、職人技の作業が必要であった。本研究で考案したアーキテクチャでは、排他的に実行されるべき随意運動を優先順位付することで選択し、同時に実行可能な不随運動は重み付け平均で統合する形式をとっている。これらのパラメタを機械学習で簡単に調整できるようになっている。今性のある振る舞いを容易に構築できるようになったことによって、今後、今性のある振る舞いが他者モデルの発生とどのような関係があるのか詳細に検討可能になったと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
人と搭乗型人工物のインタラクションで有効なモダリティが明らかになってきたとともに、今性のある振る舞いを生成するアーキテクチャも完成したことで、インタラクションの3層(今性のある振る舞いの層、心を読み合う層、知識や言葉を用いてコミュニケーションする層)間のデザインを具体的に進める段階に入ったと言える。 電動車椅子の研究では、車椅子の状態を人側に伝える仕組みを導入することで、双方が走行中に意思のやりとりを行うことを考えている。車椅子が人の心的状態を推測するとともに、人も車椅子の状態を理解することで、信頼感が生じたり、一体感が発生したりする条件を探る予定である。また、自律制御される腕ロボットも含めて、人が、人工物の動作に対して抱く予測との一致度やズレを考慮して、この問題に取り組む予定である。とくに、時間方向での一致度の効果も検討する予定である。 また、今性の効果は、他者モデルを想定することが大きく影響するコミュニケーションコンテンツを準備することで、検討する予定である。さらに、複数台のロボットと人とのインタラクションにも今性のある振る舞いのデザインの効果を検討する予定である。特に、複数台のロボットとのインタラクションでは、人が複数のロボットの動きを客観視した形でインタラクションする場合も多くあると考えられる。従来の対面型のインタラクションのモデルに囚われることなく、現象をモデル化し、インタラクションの設計方法を検討する予定である。
|
Research Products
(29 results)