2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Understanding brain plasticity on body representations to promote their adaptive functions |
Project/Area Number |
26120004
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
高草木 薫 旭川医科大学, 医学部, 教授 (10206732)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中陦 克己 近畿大学, 医学部, 講師 (60270485)
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Project Period (FY) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 先行性姿勢制御(予期的姿勢調節) / 姿勢筋シナジー / 皮質網様体投射 / 網様体脊髄路 / 身体認知 / 前頭-頭頂ネットワーク / 運動プログラム / 歩行運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は姿勢・歩行戦略とその変更に関与する身体認知機能の変容様式を解明することである.平成27年度(第2次年度)は,以下の研究成果を得た. ヒトの垂直姿勢維持における身体認知の機能的役割:起立姿勢を維持する被験者の一側外耳道に冷水を注入し,前庭感覚に外乱を加えると前庭動眼反射と前庭脊髄反射が出現する.被験者が閉眼すると姿勢は注入側に傾き,対側に向かう眼振が出現する.しかし,開眼によって姿勢は垂直位に戻り,眼振も消失する.一方,身体の何れの部位に加えた触覚刺激によっても姿勢は垂直位に戻るが,眼振は消失しない.これらの成績は,①側頭-頭頂皮質における垂直感(sense of verticality;身体認知の一つ)の生成には前庭感覚・視覚・体性感覚の統合が必要であること,②垂直姿勢の維持には皮質-前庭脊髄脊髄路が重要な役割を担うこと,を示唆する. 動物実験における予期的姿勢調節の神経機構;我々は補足運動野に起始する皮質-網様体脊髄路がこの姿勢制御を誘発すると考えている.この作業仮説の妥当性を動物実験で検討した.(1) サルの補足運動野の活動は,①4足歩行よりも2足歩行で上昇すること,②これは着地相に集中すること.③4足から2足への姿勢変化に先行して特異的に誘発されること,が明らかとなった.②,③の特徴は一次運動野の細胞においては認められないことから,2足歩行や予期的姿勢調節には補足運動野が重要な役割を担うと考えられる.(2) 除脳ネコにおいて姿勢維持における網様体脊髄路の役割を解析した.その結果,橋・延髄網様体には姿勢筋緊張制御における機能局在が存在すること,そして,延髄腹側部の網様体脊髄路ニューロンが筋緊張の維持に関与することが明らかとなった.これらの成績は,補足運動野から網様体脊髄路を経由して脊髄に投射する下行路が予期的姿勢調節の必要条件を満たすことを示している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ⅰ.動物実験の状況:(1) 旭川医大・脳機能医工学研究センター動物実験室が耐震補強工事の対象となったため,27年度の動物実験は当初の計画通りに実行できなかった.しかしながら,研究実績に示したように網様体脊髄路系の筋緊張制御に関与する研究成果を得ることができた.(2) 近畿大学におけるサルの歩行研究では,当初の予定通りの研究成果が得られている.即ち,サルの歩行学習は順調に進み,2足歩行や4足歩行での大脳皮質神経細胞活動も安定して記録できるようになっている.特に,補足運動野において4足から2足への歩行戦略の変更に先行して活動する予期的姿勢調節関連ニューロンを記録できたことは,本研究の作業仮説を証明する上で極めて重要である. Ⅱ.ヒトの姿勢制御に関する研究:これは研究期間の後半に予定していたが,旭川医大の耐震工事のために前倒しで遂行している.その結果,予期的姿勢調節の時空間パラメータが実験動物と同等であること,そして,このパラメータが脳内身体表現マーカーとして有用であることを示唆する成果を得ている.加えて,直立姿勢維持に関与する身体認知情報の統合に関与する研究知見を得たことなどを勘案すると,リハビリテーション班(C班)や工学班(B班)との共同研究を効率的に実施できる状況を整えることができたと考えている. Ⅲ.旭川医大・動物実験施設の耐震工事計画のため,中大動物における新規の分子遺伝学的研究は全面的にストップした.従って,29-30年度に予定していたサルにおける分子遺伝学的手法を用いた皮質-網様体投射系の選択的機能遮断実験は事実上不可能となった.そこで,旭川医大では代替え研究手法(後述)を用いて,ネコにおける皮質-網様体投射系の解析に終始している.これらの研究進捗状況を踏まえて,研究はおおむね順調に進展していると判定した.
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Strategy for Future Research Activity |
Ⅰ.ヒトにおける研究;予期的姿勢調節と多種感覚情報に基づく姿勢制御に関する研究を遂行する(旭川医大).今後は臨床研究も展開する.従来の動力学的解析に加えて,脳波や誘発電位を組み合わせて,損傷した脳領域と予期的姿勢調節との関連を解析する(Ⅲを参照). Ⅱ.動物実験;実験にはネコ(旭川医大)およびサル(近畿大学)で行う.予期的姿勢調節は異なる動物種においても同等の時空間パラメータで遂行されるため,動物で得られる実験成績はヒトの神経機構を理解する上でも有用である.これまでの結果は,補足運動野に起始する皮質-網様体脊髄路が予期的姿勢調節に関与することを示唆する.来年度以降,補足運動野に起始する皮質網様体脊髄路が予期的姿勢調節の実行系であることを神経生理学的研究手法で証明すると共に,補足運動野に身体認知情報を提供する側頭-頭頂皮質における多種感覚情報の統合様式の解明を試みる.一方,当初計画していた分子遺伝学的研究の遂行が不可能となった(上述).代替え手段として,従来の微量薬物注入法と新規に開発された光刺激不可逆変性法を用いる.後者は,逆行性神経標識物質に加えたクロリンビーズ(非可逆的神経損傷物質)を光刺激によって賦活させて,標識細胞を損傷させる手法である.これにより,補足運動野に起始する皮質-網様体投射の活動を選択的に遮断できる可能性がある. Ⅲ.共同研究;リハビリテーション班(C02)ならびに旭川医大リハビリテーション部との共同研究により,神経疾患患者における予期的姿勢緒節や垂直起立維持機能と身体認知(身体無視や感覚障害)機能を解析し,姿勢制御に着目した脳内身体表現マーカー(動力学的マーカー)を考案する.工学班(B02)との共同研究では,多種感覚の統合メカニズムに基づく身体認知―直立姿勢モデルの構築を試み,姿勢制御リハビリテーションの論理基盤の確立に寄与する.
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[Journal Article] Physiology of freezing of gait2016
Author(s)
Snijders AH, Takakusaki K, Debu B, Lozano AM, Krishna V, Fasano A, Aziz TZ, Papa SM, Factor SA, M. Hallett M.
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Journal Title
Annals of Neurology (in press)
Volume: in press
Pages: in press
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] 意識と意識障害2015
Author(s)
高草木薫
Organizer
第9回札樽病院リハビリテーション研修会
Place of Presentation
小樽
Year and Date
2015-08-21 – 2015-08-21
Invited
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[Presentation] 睡眠と睡眠障害2015
Author(s)
高草木薫
Organizer
第8回札樽病院リハビリテーション研修会
Place of Presentation
小樽
Year and Date
2015-05-20 – 2015-05-20
Invited
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