2002 Fiscal Year Annual Research Report
経済的環境における誘因両立的で民主的なメカニズムの設計
Project/Area Number |
00J01926
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
水上 英貴 大阪大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 社会選択理論 / メカニズムデザイン / 仲裁理論 / 公理的交渉理論 / インセンティブ / 戦略的操作不能性 / 公共財 |
Research Abstract |
誘因両立的な仲裁制度(仲裁ルール)を設計することは可能なのであろうか?紛争解決のために第三者による仲裁が行なわれる際には,仲裁者が選好に代表される紛争当事者の私的情報を聞き出す必要がある.しかしながら,紛争当事者たちは,自分にとってより有利な仲裁結果を引き出そうとして,自分の私的情報を虚偽申告するインセンティブを持つ.その結果,仲裁者の意図した通りの仲裁案が実現しなくなる恐れがある. では,このような虚偽申告を行なうインセンティブを紛争当事者たちが持ち得ない,つまり,正直に自分の私的情報を申告する(戦略的操作不能性を満たす)ような仲裁制度とはいったいどのようなものなのであろうか?遺産相続や企業の利潤分配などにみられるような,分割可能な財をめぐる紛争を仲裁する状況を考え,戦略的操作不能な仲裁制度がどのようなものであるのかを明らかにした.その結果は,Mizukami-Wakayama "Toward Strategy-proof Arbitration" (2003)にまとめられている.また,Mizukami-Wakayama (2003)で提示した仲裁制度の設計方法について,Mizukami et. al "Strategy-proof and Pareto Efficient Arbitration : Construction of Mechanisms" (2003)で考察した. これらの研究でわかったことは,戦略的操作不能性を満たす仲裁ルールは,固定比率分割ルール(ある決められた分割比率に基づいて,常に財を分割するルール)の他には存在しないということである.実際の仲裁の場面では,等分割ルール(これは,固定比率分割ルールのひとつである)が使われることが多い.その理由のひとつとして,等分割ルールが戦略的操作不能性という望ましい性質を持っていることが挙げられるのではないかということが,私の研究結果の意味することである.
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Research Products
(1 results)