2002 Fiscal Year Annual Research Report
ミクロ・メゾスケールの構造変化に着目したナノ多結晶体の力学特性と変形機構の検討
Project/Area Number |
00J01946
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
下川 智嗣 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 分子動力学法 / ナノ結晶 / Hall-Petchの関係 / 転位 / 粒界すべり |
Research Abstract |
微小多結晶材料の変形メカニズムおよび力学特性の粒径依存性を分子動力学シミュレーションにより明らかにすることを目的とし、アルミニウムを想定した代表寸法の異なる多結晶モデルの単軸引張解析を行ない、内部構造変化の観測と力学特性の評価を行なった。得られた結果を以下に示す。 ●平均粒径3nm〜20nm(2,3次元モデル) 平均粒径20nmまでは、粒径が大きくなるにつれて応力極大値、流動応力ともに大きくなるという通常のHall-Petchの関係とは反対の関係(逆Hall-Petchの関係)が得られる。 ●平均粒径20nm〜40nm(2次元モデル) 平均粒径が20nmを超えて大きくなると流動応力の粒径依存性が小さくなる。また40nmにおいては、2次元モデルのため結晶すべり系が2つしか表現できていないものの、一つの粒内で複数の転位が相互作用を行なっており、流動応力が上昇傾向にあることが確認できる。 このことは、実験で粒径がサブミクロンオーダのときに観測される通常のHall-Petchの関係からナノオーダまで微細化されたときに観測される逆Hall-Petchの関係に移る遷移状態を表現していると推測できる。粒径が20nm以下の場合、欠陥(粒界等)の体積比と強度は比例関係を示しており、粒界領域が変形を支配していることが考えられるが、粒径が大きくなるとその関係は崩れ、強度と粒内の構造が密接に関係していると考えられる。つまり多結晶体の変形において、粒径が大きなとき粒界は変形の障害物という役割であるが、粒径がナノオーダまで小さくなると結晶粒が粒界すべりの障害物となり、粒界と結晶粒の役割が変化することが考えられる。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 下川智嗣: "Fccナノ多結晶金属の力学特性の粒径依存性に関する分子動力学法による研究(積層欠陥エネルギーによる影響の検討)"日本機械学会論文集(A編). 68巻676号. 26-33 (2002)
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[Publications] 下川智嗣: "ナノ多結晶体中の粒界の構造と力学特性に関する分子動力学法による研究"日本機械学会論文集(A編). 68巻670号. 12-19 (2002)