2002 Fiscal Year Annual Research Report
δ-π相互作用をもつ含硫黄環状π共役系化合物の合成と性質
Project/Area Number |
00J03555
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
若宮 淳志 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | オリゴチオフェン / ラジカルカチオン / ジカチオン / X線結晶構造解析 / πダイマー / キノイド型構造 / 基底一重項 / NMR |
Research Abstract |
ビシクロ[2.2.2]オクテン骨格に囲まれたオリゴチオフェンのカチオン種の合成と性質 前年度に合成に成功した、ビシクロ骨格の縮環したオリゴチオフェン(二,三,四,および六量体)について、化学的な酸化によるカチオン種の発生と単離を行い、それらの構造および性質を明らかにした。 まず、ニトロソニウム塩を1当量もちいた一電子酸化を行い、ジクロロメタン溶液にヘキサンを拡散させることにより、二および三量体のラジカルカチオン塩を空気中でも極めて安定な結晶として合成・単離し、X線結晶構造解析により詳細な構造を決定することに成功した。その結果、理論計算による予測通り、ラジカルカチオン状態における顕著なキノイド型構造の寄与を、初めて実験的に明らかにした。一方、それらの結晶構造および、低温でのESRならびに電子スペクトル測定の結果から、ビシクロ骨格の立体効果によりラジカルカチオンの二量化が効果的に抑制されていることを確認した。 また、二量体および三量体により強い酸化剤である五フッ化アンチモンを反応させることにより、対応するジカチオンをそれぞれ赤色、濃青色の溶液として発生させ、それらのNMR観測に成功した。その結果、二量体および三量体のジカチオンは、基底状態一重項であることが初めて実験的に示された。また、二量体のジカチオンではβ位プロトンのNMRシグナルが二種類観測され、理論計算の結果、これらはanti体とsyn体であることがわかった。これらのシグナルは、-40℃から20℃まで温度を上昇させてもコアレスしなかったことから、anti体からsyn体への回転障壁は14kcal/mol以上であることが見積もられ、理論計算結果(27kcal/mol)と併せてジカチオン状態でのキノイド型構造の寄与によるチオフェン環連結部の結合の二重結合性が示された。 さらに、四および六量体のニトロソニウム塩を2当量もちいた二電子酸化により、対応するジカチオン塩を空気中でも極めて安定な結晶として合成・単離し、X線結晶構造解析によりそれらの構造を決定することに初めて成功した。これらのジカチオンにおいても、オリゴチオフェン部の炭素-炭素結合長はキノイド型構造の寄与により平均化しており、二および三量体の場合と同様に基底重項であることを明らかにした。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Wakamiya, A., Nishinaga, T., Komatsu, K.: "The Stable Radical Cation of Thiophene Annelated with Bicyclo[2.2.2]octene and Its Reaction with Triplet Oxygen to Give a Protonated Cation of 2-Butene-1,4-dione Derivative"Chemical Communications. 1192 (2002)
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[Publications] Wakamiya, A., Nishinaga, T., Komatsu, K.: "1,2-Dithiin Annelated with Bicyclo[2.2.2]octene Frameworks. One-Electron and Two-Electron Oxidations and Formation of a Novel 2,3,5,6-Tetrathiabicyclo[2.2.2]oct-7-ene Radical Cation with Remarcable Stability Owing to a Strona Transanunular Interaction"Journal of the American Chemical Society. 124. 15038 (2002)