2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
00J09666
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北村 祐二 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 回転成層流体 / 乱流解析 / 数値実験 |
Research Abstract |
今年度は、昨年度までに開発した数値モデルを用いて、三次元Boussinesq系での成層流体中の強制乱流の数値実験を行った。まず、渦粘性係数を固定したときにエネルギーカスケードが成層にどのように依存するかを調べ、成層を含む場合にエネルギーカスケードとエネルギー逆カスケードのどちらが観測事実を理解する上でより妥当であるかを検討した。その結果、成層が強いほどエネルギー逆カスケードがより起こりやすいものの、観測結果を説明するには不十分であることが明らかとなり、Lilly(1984)の提唱した成層乱流の理論は観測を説明するには至らないことが分かった。一方、エネルギーカスケードについても成層度に大きく依存し、成層が強くなるほど小スケールへのエネルギー輸送は小さくなることが分かった。固定した渦粘性係数を与える限りにおいては、強制を十分に強くしない限り観測されるべき乗則は得られず、観測される振幅よりも大きな振幅しか得られなかった。そのため、観測事実を説明するにはまだ矛盾が生じていることになる。しかしながら、エネルギー収支を調べたところ、成層を含む場合にはエネルギーが高波数側に輸送された後に高波数側で散逸が起こるという期待される形になっていないことが分かった。つまり、渦粘性係数を固定したままでは適切な散逸過程が表現できないことになる。ここまでの結果を気象学会2002年秋季大会で報告した。 さらにLESを用いた数値実験を行い、成層乱流中のより適切な散逸過程が表現できるかを検討した。エネルギー収支としては、定性的にはエネルギー輸送が増大し、高波数側での散逸が増えるという点や低波数域でのエネルギースペクトルが観測に近いものとなっている点で改善が見られたが、高波数側の散逸が不十分でここでのエネルギーが過大評価されている問題も明らかとなった。これらの結果については今後の学会で報告する予定である。
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