2002 Fiscal Year Annual Research Report
雌雄異株植物を用いたY染色体と性決定機構に関する分子細胞学的研究
Project/Area Number |
00J09835
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中尾 俊介 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 雌雄異株植物 / 性染色体 / 生殖器官 / 器官分化 / 色素体分裂 / FtsZ |
Research Abstract |
本研究では雌雄異株のモデル植物として、XY型の性染色体を持つナデシコ科の雌雄異株植物ヒロハノマンテマを用い、Y染色体上に存在する雄特異的な因子を同定するとともに、雌雄が形態的に初めて識別できるようになる段階における生殖器官分化の機構を分子細胞学的に解明することを目的とした。その際、植物において細胞に多様な機能を与える特徴的なオルガネラである色素体に着目し、その分裂・増殖機構に焦点を当てた。 まず、ヒロハノマンテマにおいて、雄特異的なDNAとしてRAPD法により285アミノ酸に相当するORF(ORF285)を単離した。ORF285は、サザンハイブリダイゼーション解析・STS-PCR解析・FISH解析によりY染色体上におけるシングルコピーでの存在が示された。(Nakao et al.,2002) 次に、雌雄の個体において異なる生殖器官を生成する機構を詳細に解析するために、植物細胞の機能を特徴づける色素体に着目し、各成長段階に応じた組織毎の色素体の分裂・増殖機構を解析した。色素体分裂に関与するFtsZリングを指標として用いたところ、子葉と本葉、あるいは雄と雌の花序の間でもタンパク質の発現量に差が見られ、相同な器官の間でも色素体の分裂制御機構は異なることが示された。また、FtsZリング自体を色素体から浮遊状態で単離することにも成功し、子葉でも本葉でも葉緑体サイズに関わらずリングの太さは同じであり、収縮の際に太さを変えることなく縮むことが明らかとなった。本葉では子葉よりもFtsZタンパク質の蓄積量が多く、このような蓄積量と色素体サイズの関係は、葉の成長に応じた色素体の増殖活性を反映しているとみられることから、色素体分裂とFtsZリングの動態は、器官分化の初期段階における特異性を裏打ちしていると考えられ、性分化の解析対象として適していることが示唆された。(日本植物学会大会(2002)にて発表)
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Research Products
(1 results)