2002 Fiscal Year Annual Research Report
応用一般均衡モデルによる環境政策(温暖化対策)の社会経済学的分析
Project/Area Number |
00J09868
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
奥島 真一郎 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 一般均衡モデル / 環境税 / 公平性 |
Research Abstract |
本研究は、環境政策が経済社会に与える影響について分析し、適切な対策を行うための政策提言を目的とするものである。今年度は以下のような成果を得た。 まずモデル構造の見直し、精緻化、またデータの整備、更新等を行い、応用一般均衡モデルODIN(OPERA ver.2)を構築した。そして、本モデルを用いて、地球温暖化対策が我が国経済に与える影響について、シナリオの変更も含めて分析し直した。結果は以下のとおり。(1)我が国において京都議定書目標達成のために必要な炭素税率(排出許可証価格)は炭素1トンあたり約18000円だが、税収還流を効率的に行うことで炭素税導入のマクロ経済的費用を小さく(GDPで0.2%)抑えることができる。(2)負担の公平性や構造調整の痛み、国際競争力の観点から、エネルギー多消費型産業に対して一定の減免が望ましい。 次に、地球温暖化対策と家計の所得分配との関係についての分析を進めた。炭素税と所得税減税のミックスの場合、炭素税収を利用して所得格差是正を促進しようとするのに伴ってマクロでみた消費総額、実質GDPは減少する。つまり、当ポリシーミックスにおいて、経済効率性と分配の公平性とはトレードオフの関係にある。そこで本研究では、このようなトレードオフ関係についてAtkinson社会厚生関数を用いて総合的に評価した。その結果、人々の価値観と望ましい政策との関係が定量的に明らかとなった。具体的には、我が国において、ある程度平等促進的に炭素税収還流を行う方が社会厚生を高めることができるとの示唆が得られた。 さらに、環境政策を総合的に評価できるように、応用一般均衡モデルOPERAを廃棄物・リサイクル政策用に改良したOPEAR-Rモデルを構築した。これはまだ研究の初期段階であるが、本モデルを用いて廃棄物税の影響評価を行った研究を学会等において発表した。
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Research Products
(1 results)