1989 Fiscal Year Annual Research Report
がん細胞における新しいカルシウム結合蛋白質の検索とその機能発現機構の解析
Project/Area Number |
01015038
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
田中 利男 三重大学, 医学部, 教授 (00135443)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中 充子 三重大学, 医学部, 助手 (10093139)
|
Keywords | カルシウム / カルシウム結合蛋白質 / Sー100 / がん細胞 / メラノーマ |
Research Abstract |
がん細胞の特性の一つとして、細胞内カルシウムイオン濃度の上昇や細胞増殖が細胞外液のカルシウム濃度に依存しない点が明らかにされている。がん細胞におけるこれらカルシウム調節の異常と増殖や運動における異常を結び付ける分子機構として、細胞内カルシウム結合蛋白質が考えられている。現在カルモデュリンSー100等のEFハンド構造を持つ蛋白質グループ、カルパクチンなど種々のタイプのカルシウム結合蛋白質が報告されている。しかしながら、がん細胞においてこれらの蛋白質がどのような役割を果たしているのかは不明な点を多く残している。そこで申請者は、がん細胞における新しいカルシウム結合蛋白質の検索を試み、新しい低分子量のカルシウム結合蛋白質(CaBPc)を分離、精製した。CaBPcの分子量は、SDSポリアクリルアミド電気泳動上約1.1万、ゲル濾過法では約2.4万であり、尿素電気泳動上この分子は均一なバンドを示すことからも、ダイマーであることが推定された。平衡透析法によるカルシウム結合性の解析により、CaBPc1分子に2個のカルシウムイオンが結合することが明らかになった。この蛋白質は二量体形成やカルシウム結合性及び分子量などから、細胞分化や細胞周期のプログレーションに関与すると考えられているSー100蛋白質に似た性質を幾つか持つことが明らかとなった。しかし、アミノ酸組成においてアルギニンが多いことや、等電点が6.2と高いことなどSー100蛋白質とは異なる特徴を持っている。さらに、CaBPcの特異抗体を使用することにより、種々のがん細胞での発現を解析した。そこで、その発現は従来のSー100蛋白質とは異なり、高い選択性が認められた。以上のことから我々が見出した新しいカルシウム結合蛋白質はがん細胞の異常な細胞特性におけるカルシウムイオンの役割を解析する上で重要な蛋白質分子であることが示唆された。
|
-
[Publications] T.Tanaka: "Selective low levelof protein kinase C isozymes in a tumor promoter-dependent mouse leukemia cell line." Biochem.Biophys.Res.Commun.
-
[Publications] 田中利男: "広範囲・尿化学検査 免疫学的検査(上巻)I.生化学的検査 A.蛋白関係 カルシウム結合蛋白質" 日本臨床. 47. 101-103 (1989)
-
[Publications] 田中利男: "血小板機能調節とカルシウムイオンRegulation of platelet function by intracellular calciumion." 日本臨床. 47. 773-777 (1989)
-
[Publications] 田中利男: "細胞内カルシウム情報伝達機構と薬物作用" 日本臨床. 47. 1740-1745 (1989)
-
[Publications] 田中利男: "イノシトールリン脂質代謝回転と細胞内情報伝達機構" 日本臨床. 47. 2353-2358 (1989)
-
[Publications] T.Tanaka: "in Calcium Protein Signaling(Calcium signaling of calcium-binding proteins and drug actions.)" Eds.H.Hidaka,E.Carafoli,A.R.Means,T.Tanaka, Plenum Press,