1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01041058
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉山 幸丸 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (20025349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大沢 秀行 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (60027498)
松沢 哲郎 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (60111986)
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Keywords | ボッソウ / 野生チンパンジ- / ハンマ-使用 / 利き手 / メタ道具 / 学習 / ミドリザル / パスタザル |
Research Abstract |
本研究は異なる環境に生息する霊長類の行動と生態を明らかにし、その適応様式の比較検討を目的とする。すなわち、カメル-ン最北部・カラマルエのパタスザルとミドリザル、およびギニア・ボッソウのチンパンジ-を対象としている。しかしながら、前年度にボッソウのチンパンジ-の人付けが急速に進み、研究に進展が見られたので、今年度はボッソウのチンパンジ-調査に焦点を絞った。 チンパンジ-の道具使用の中でも、とくに文化的特徴の顕著なハンマ-使用による堅果割り行動は、本調査地で代表者の杉山が初めて直接観察に成功したものであり、今日でもボッソウと、主としてそこから300キロ以内でのみ確認されている。この行動が、前年度末にその詳細まで観察できるようになり、引き続いてビデオ撮影を交え、過去15年にわたり識別されている個体ごとに詳細に記録した。 その結果、ハンマ-使用行動は母親や周りの個体を模倣しながら長い年月をかけて完成するものであり、成熟に達するまでの10年以上を必要とすることがわかった。石をもてあそぶ、そこらに叩きつける、台石の上をもう一つの石を叩く、石台の上に堅果を置いてハンマ-で叩く、真上から頃合の力で叩く、という過程を経るのである。ハンマ-を使用する手は個体ごとにはっきりと決まっているが、未成熟個体ではハンマ-を反対の手に持ちかえるなど、利き手は学習の中で完成してゆく。しかしながら、枝から実を採るなどの行動には左右の差はほとんでない。人間と同じ意味の「利き手」が確認されたのはこれが最初である。さらに、台石の表面が斜めに傾いていると、低い方の底にもう一つの石を当てがうなど、「道具のための道具」(メタ道具)を使用することが野生チンパンジ-で初めて発見された。
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Research Products
(1 results)