1991 Fiscal Year Annual Research Report
急速な開発によって消失するクック諸島先史遺跡の復元と保存に関する調査
Project/Area Number |
01041081
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Research Institution | Keio University. |
Principal Investigator |
近森 正 慶応義塾大学, 文学部, 教授 (80051390)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
UTANGA Tony クック諸島政府資源保護局, 主任
KINGAN Sturt クック諸島政府科学調査局, 技官
岡嶋 格 東横学園女子短期大学, 助教授 (70123073)
吉田 俊爾 聖マリアンナ医科大学, 解剖学教室, 専任講師 (70081627)
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Keywords | 文化財の保存・復元 / 現地協力 / 考古学的調査 / クック諸島 / ポリネシア文化 / サンゴ礁 / マラエ / 居住遺跡 |
Research Abstract |
今年度は、平成2年度の成果にもとづき、クック諸島の主島ラロトンガと北部のマニヒキ島において、調査を行った。 マニヒキ島は、標高2メ-トルばかりの低平なサンゴ礁であるために、サイクロンによる高波などによって先史時代の遺跡はつねに撹乱の危険にさらされている。サンゴ礁の地形は、破壊と形成の均衡のうえに成りたっているから、人間の居住もまた土地の不断の形成過程のなかにあるといってもよい。本年は、モトゥ・ハカマルを集中的に調査し、先史時代の集落や祭祀場の復元に全力をあげた。これによって、紀元1000年以前に人間の居住開始がさかのぼることが明らかになった。今後、伝承、系譜など民族誌的情報とあわせて、この島の居住史が明らかになるとともに、東部ポリネシアにおける人類移動史が確立されよう。 ラロトンガ島は、アヴァナ川下流の沖積低地にのぞむテ・アナにおいて集中的な発掘調査をおこなった。丘陵北麓の基部に開口した岩陰にある本遺跡は、耕地の拡大や家畜の飼育などによって部分的に改変がみられるが、河川の土壌運搬作用と山地からの崩積によって層位学的にすぐれた条件を提供している。文化層から出土した貝製釣針は、この島で最初の発現であり、ラロトンガ文化の系譜について貴重な示唆を与える。資料の分析をまって、この地域における人間居住の編年基準が確立されるものと期待される。 ニュ-ジ-ランドのオ-クランド大学人類学研究室は、今回のわれわれの成果を高く評価し、将来にわたる共同研究を強く求めてきている。
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Research Products
(29 results)
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[Publications] 近森 正: "『プカプカ環礁の考古学的調査』" 第40回日本人類学会・日本民族学会連合大会記事. (1986)
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[Publications] 近森 正: "『ポリネシアクック諸島におけるサンゴ礁環境への文化的適応過程』" 慶応義塾大学地域研究センタ-CASニュ-ズレタ-. 15. (1987)
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[Publications] 近森 正: "『クック諸島の考古学的調査』" 東南アジア考古学会会報. 8. (1988)
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[Publications] 近森 正: "『クック諸島の考古学的調査』" 慶応義塾大学地域研究センタ-CASニュ-セレタ-. 18. (1988)
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[Publications] 近森 正: ""Archaeology on Pukapuka Atoll."" Man and Culture in Oceania.3. (1988)
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[Publications] 近森 正: "『歴史の中の文化と生態』" 季刊人類学. 19ー2. (1988)
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[Publications] 近森 正: "『男性原理を象徴して墓に埋められた釣り針』" 季刊民族学. 12ー4. (1988)
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[Publications] 近森 正: ""An Archaeological Survey of Pukapuk Atoll,1985(Preliminary Report)."" Occasional Papers.of Dept.of Archaeology and Ethnology,KEIO Univ.6. (1988)
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[Publications] 近森 正: "『環礁の首長制社会〜クック諸島プカプカ環礁の調査〜』" 慶応義塾大学地域研究センタ-CASニュ-ズレタ-. 24. (1989)
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[Publications] 近森 正: "『死者と釣針〜プカプカ環礁の民族考古学〜』" 「考古学の世界」新人物往来社. (1989)
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[Publications] 近森 正: "『島のおきて〜プカプカ環礁の資源管理と社会進化〜』" 「民族誌と考古学」六興出版. (1989)
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[Publications] 近森 正: "『北部クック諸島における考古学民族学的調査』" 第7回日本オセアニア学会研究大学紀要. (1990)
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[Publications] 近森 正: "『マンガィア島のマラエ』" 「クック諸島〜人間と先史社会〜」慶応通信. (1990)
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[Publications] 近森 正,塩崎 豊: "『生存のための伝統〜ナサウ島をめぐる領有問題〜』" 「クック諸島〜人間と先史社会〜」慶応通信. (1990)
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[Publications] 吉田 俊爾: "『クック諸島プカプカ環礁出土の人骨』" 第40回日本人類学会・日本民族学会連合大会記事. (1989)
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[Publications] 吉田 俊爾: "『クック諸島出土先史時代人骨の骨病変』" 聖マリアンナ医科大学 医学会雑誌. 15ー4. (1987)
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[Publications] 吉田 俊爾: "『クック諸島プカプカ環礁出土の先史時代頭蓋』" 第41回日本人類学会・日本民族学会連合大会記事. (1987)
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[Publications] 吉田 俊爾: ""Analysis of Human Skeletal Remains."" Occasional Papers of Archaeology and Ethnology,KEIO Univ.6. (1988)
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[Publications] 吉田 俊爾: "『プカプカ環礁の人類学的所見』" 慶応義塾大学地域研究センタ-CASニュ-ズレタ-. 29. (1989)
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[Publications] 吉田 俊爾: "『プカプカ環礁出土の先史時代頭蓋』" 「クック諸島〜人間と先史社会〜」慶応通信. (1990)
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[Publications] 岡嶋 格: "『トンガレヴァ(ペンリン)環礁の考古学的調査概報』" 「クック諸島〜人間と先史社会〜」慶応通信. (1990)
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[Publications] 山口 徹(研究協力者): "『西ポリネシア ウベア伝統社会の形成』" 「クック諸島〜人間と先史社会〜」慶応通信. (1990)
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[Publications] 山口 徹(研究協力者): "『マラエ(トンガレヴァ環礁の考古学的調査概報)』" 「クック諸島〜人間と先史社会〜」慶応通信. (1990)
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[Publications] 山口 徹(研究協力者): "『クック諸島トンガレヴァのマラエ(祭祀遺跡)』" 第44回日本人類学会日本民族学会連合大会記事. (1990)
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[Publications] 近森 正: "『礁形成と人間居住〜マニヒキ、ラカハンガ環礁の考古学的調査から〜』" 第8回オセアニア学会研究大会記録. (1991)
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[Publications] 近森 正: "『プカプカ島の語られる歴史』" 季刊オセアニア. 59. (1992)
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[Publications] 近森 正: "『サンゴ礁の精神史』" 慶應義塾大学日吉オ-プンフォ-ラム. 18. (1992)
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[Publications] 近森 正: "『サンゴ礁の形成と人間居住』" 日本民族学会第27回研究大会要旨. (1992)
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[Publications] 近森 正,吉田 俊爾,岡嶋 格,山口 徹: ""Te Mata:Looking at the Past."" 慶應義塾大学文学部考古学民族学研究室, 1-45 (1991)