Research Abstract |
塑像出土寺院である滋賀県雪野寺跡に対する発掘調査を,平成2年7月25日〜8月17日,および平成3年3月8日〜29日に実施した。今回の調査では,これまでに明らかになっていた講堂跡の北西の位置で,新たに礎石建物を検出することができた。この建物は,東西約25m,南北約15mの基壇の上に建てられており,基壇盛土の状況など,塔や講堂よりも簡単な作りである。柱位置がわかるところでは,柱間寸法(梁行)が2.4m(8尺)で,講堂よりも狭い。このような点,とくに位置や規模から判断して,食堂跡のような僧地の施設と考えた。この基壇の周囲からは,多くの土器が出土しており,炊飯具や供膳具が多数を占めること硯なども見られることも,食堂跡という推定を裏づけるものと考えられる。ほかに,三彩・二彩陶器,緑釉陶器,灰釉陶器の出土も比較的多くあり,古代寺院の構成を知るうえで,きわめて貴重な資料が得られたと言える。 雪野寺跡出土塑像および土器・瓦などの遺物についての整理検討を,通年おこない,塑像の出土が塔跡に限られること,講堂跡で鉄釘の出土が多いことなど,新しい知見を加えた。そして,土器に対する検討から,創建建物の焼亡が,10世紀であることがうかがえた。 平成2年12月1日には,塑像研究会を催し,菱田哲郎・高橋克壽が「雪野寺跡の発掘調査について」,猪熊兼勝が「日本の出土塑像」を発表した。それにあわせて,塑像出土寺院についての情報を収集している。
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