1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01301064
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石川 武 北海道大学, 法序部, 教授 (20000648)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 紫郎 東京大学, 法学部, 教授 (00009797)
村上 淳一 東京大学, 法学部, 教授 (80009795)
成瀬 治 成城大学, 文芸学部, 教授 (70011278)
山田 欣吾 一橋大学, 経済学部, 教授 (70017523)
小菅 芳太郎 北海道大学, 法学部, 教授 (00000654)
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Keywords | 法化 / 文書化 / 訴訟化 / 学識法 / 専門法律家 / 帝国議会 / 等族 / ドイツの国制 |
Research Abstract |
今年度の主たる研究活動は、9月17日から20日までの、ドイツから主として中世史を専功する4人の研究者を招いた合宿セミナ-であった。そこでの主たる争点は、中世社会の「法化」現象をどう捉えるかということであった。Keller氏は、11、12世紀のイタリアに素材を求めながら、これを身分秩序などの「固定化」、およびそれを確保するための「文書化」という観点から、考察した。すなわち、たとえば、この時期に、社会的実態としての騎士的生活者と法的身分としての騎士とが明確に区別されるが、その根拠として当時作られた都市の成文規範・条令が大きな意味をもった。そして、この成文法化自体が裁判制度の形成・整備および書かれたものを根拠にした法的安定性の確保の志向と深い関わりをもっている。他方、Diestelkamp氏は、中世後期のドイツの国王裁判所を手がかりに、紛争の裁判による処理、「訴訟化」という観点から、「法化」の問題を考察した。そこでは強調されたことは、裁判が権威的な法規範の適用による紛争の解決ではなく、当事者および判決発見人たちの合意調達の場であった、ということである。訴訟制度の整備と紛争の裁判による解決という共通点をもつにせよ、Keller氏の見方との間にはずれがあるが、それはあるいはイタリアの都市国家とドイツとの違いに由来するとも考えられる。この点では、まさにKeller氏が問題にした時期に始まる学識法の影響が問題になるが、Moraw氏は、中世後期ドイツの帝国および諸領邦における官僚制の形成、および、そこにおける専門法律家の地位、機能に関して有意義な教示を与えた。また、ドイツの中世後期の帝国議会が、結局、国民代表議会とはなりえず、等族たちがあい兼う場にしかすぎなかったということは、ドイツの国制の特徴をよく示すものであり、Diestelkamp氏のいう「権威的法規範の不存在」と深く関わるものであろう。
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Research Products
(21 results)
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[Publications] 石川武: "ザクセンシュピ-ゲルにおけるラント法とレ-ン法(一)" 北大法学論集. 39・5・6. 1605-1665 (1989)
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[Publications] 石川武: "アイゲンとゲヴェ-レ・補論-岩野英夫氏の批判に接して-" 北大法学論集. 40・3. 489-554 (1990)
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[Publications] 石川武: "ザクセンシュピ-ゲルにおける平和と法(一)" 北大法学論集. 40・5・6. (1990)
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[Publications] 小菅芳太郎: "クストディア(保管・監護)責任覚書" 北大法学論集. 39・5・6. 1667-1720 (1989)
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[Publications] 小菅芳太郎: "テルトゥリアヌスの法学(覚書)" 北大法学論集. 40・5・6. (1990)
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[Publications] 佐藤彰一: "第10回フララン国際研究集会に出席して" 史学雑誌. 98・7. 61-66 (1989)
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[Publications] 佐藤彰一: "メロヴィング期ベリイ地方の空間組織-古代的都市=農村関係の存続と展開-" 名古屋大学文学部論集CIII,史学36. 1-18 (1990)
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[Publications] 村上淳一: "システム理論と道徳" 法学協会雑誌. 106・5. 148-163 (1989)
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[Publications] 村上淳一: "現代法分析の視角" 法学協会雑誌. 107・1. 1-38 (1990)
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[Publications] 小川浩三: "Azonis Summa in C.1.14(1)-アゾ-の慣習法論(2)-" 北大法学論集. 39・5・6. 1919-1948 (1989)
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[Publications] 小川浩三: "Azonis Summa in C.1.14(2完)-アゾ-の慣習法論(2)-" 北大法学論集. 40・3. 795-818 (1990)
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[Publications] 和仁陽: "(翻訳)ヴェルナ-・オグリス「法律家・政治家としてのゲ-テ」" 日独法学. 13. 54-67 (1989)
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[Publications] 和仁陽: "学界展望ドイツ法Klaus Tanner:Die fromme Verstaatlichung des Gewissens,1989の書評" 国家学会雑誌. 103. (1990)
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[Publications] 和仁陽: "(書評)Besprechung v.:Uwe Schultz(Hg.):Das Fest.Eine Kulturgeschichte von der Antike bis zur Gegenwart,1989" ZEITSHRIFT DER SAVIGNY-STIFTUNG FUR RECHTSGESCHICHTE-GERMANISTISCHE ABTEILUNG. 107. (1990)
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[Publications] 林信夫: "(翻訳)G.I.ルッツァット『ギリシァ・ラテン法律碑文学』IV" 専修法学論集. 50. 335-370 (1989)
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[Publications] 林信夫: "La pollicitatio ob honorem de Trajans" Annals of the Archive of "Ferran valla;Tabermer's library. 6. 113-135 (1989)
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[Publications] 林信夫: "古代ロ-マにおける「無名契約」について" 法学. 53・6. 145-184 (1990)
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[Publications] 林信夫: "(翻訳)G.I.ルッツァット『ギリシァ・ラテン法律碑文学』V" 専修法学論集. 51. 203-216 (1990)
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[Publications] 石井紫郎・水林彪: "法と秩序" 岩波書店, 450 (1990)
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[Publications] 和仁陽: "教会・公法学・国家-初期カ-ル・シュミットの公法学-" 東京大学出版会, 400 (1990)
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[Publications] 二宮宏之他: "シリ-ズ「世界史への問い」4社会的結合" 岩波書店, 307 (1989)