1990 Fiscal Year Annual Research Report
原基的工業化と社会・経済構造の変容に関する比較史的研究
Project/Area Number |
01301080
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石坂 昭雄 北海道大学, 経済学部, 教授 (80000686)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒田 利夫 青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (80121721)
斎藤 修 一橋大学, 経済研究所, 教授 (40051867)
安元 稔 駒沢大学, 経済学部, 教授 (00067860)
柳沢 治 東京都立大学, 経済学部, 教授 (00062159)
松尾 太郎 法政大学, 経済学部, 教授 (70061108)
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Keywords | 原基的(プロト)工業化 / 農村工業 / 人口動態 / 問屋制家内工業 / 地域 / 出生率 / 人口圧 / 家族 |
Research Abstract |
平成2年度は、平成2年7月13日〜14日に神戸で、10月6日〜7日に札幌で、平成3年1月5日に東京で研究集会を開催し、各研究分担者の担当地域についての研究状況と個別的実証研究の報告・討論を行った。これらの報告により明らかにされた重要な点を整理検討して列記しておきたい。 1.人口圧と農村工業の展開との関連は、地域によって異なる歴史的諸要因の様々な作用が認められ、過剰人口の存在自体がただちに農村工業の発展に有利に作用するわけではない。この点は、とりわけアイルランドの場合に認められる。また、農村工業の発展は、その初期には結婚年齢の低下や出生率の向上を通じて、人口増と高い人口密度をもたらすとはいえ、一定の成熟期に入ったのちには、結婚年齢はかなり高くなる例があり、農村工業を支える経済的諸条件のみならず、様々の社会的な構造も配慮しなければならない。2.近代西・中欧に農村工業形成の条件として考慮されねばならない点は、中世以来の農業=土地制度との関連である。特に領主制の規制の形態や強度、その後の土地所有の状況(大土地所有か多数の自作農民による分有か)、また古い農業地帯か、あるいは開墾された旧森林地域であるか、牧畜地帯であるかによって大きな差異が認められる。3.機械制大工業への移行との関連では、フランドルのように、集約的零細農民経営と結び付いた、人口圧の大きい地域では、かえって問屋制家内工業すら展開できず買入制が支配的であり、産業革命への対応も停滞的であるのに対し、むしろ牧畜地帯では労働力の不足や工賃の騰貴、技術的隘路の解決の必要から、積極的な対応を示している。4.工業化との関連で、当該農村工業の原料や製品市場関係が非常に重要であり、綿業・高級紡績毛毛織物工業・梳毛毛織物と麻織物・絹織物の場合で大きな差異がみられる。
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[Publications] 石坂 昭雄: "エミ-ル・ドゥ・ラヴレ-と『プロテスタンティズム=カトリシズム問題』ー1870年代における自由主義・社会政策・プロテスタンティズムー" 北海学園大学『経済論集』. 第38巻. 25-46 (1990)
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[Publications] 安元 稔: "Economic and Demographic Implications of WorkingーClass Housing in Early Victorian Leeds," Ad.van der Woude,Jan De Vries and A.Havami (eds.),<Urbaninzation in History: A Process of Dynamic Implication>___ー Oxford U.P.300-327 (1990)
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[Publications] 安元 稔: "15世紀中葉英国地方都市の裁判所記録" 比較都市史研究会編『都市と共同体』. 上. (1991)
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[Publications] 酒田 利夫: "イングランドにおける都市化のクロノロジイ(下)" 『青山国際政経論集』. 第16号. 89-100 (1990)
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[Publications] 酒田 利夫: "プロト工業化期イングランド・ミッドランド地方の農村枠編業と社会構造" 『青山国際政経論集』. 第17号. 317-333 (1990)
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[Publications] 佐村 知明: "J.R.マレ-の予算案についてー1710年のフランスの財政収支と政府金融の内外状況ー" 『大阪大学経済学』. 第40巻. (1991)
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[Publications] 柳沢 治: "ドイツにおける競争規制と中小資本の位置ー第1次世界大戦前後の転換ー" 『社会経済史学』. 第56巻. 38-63 (1990)
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[Publications] 馬場 哲: "東部ドイツにおける農村工業と都市ー16〜18世紀オ-バ-ラウジッツ麻織物工業の展開ー(1)(2)" 『経済学論集』. 第57巻. (1991)
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[Publications] 松尾 太郎: "The Attitude and Activities of the Workers in the Early Years of Industrialization: A Comparative Aspect of Japanese and Irish Economic and Social History" <Hosei University>___ー <IrelandーJapan>___ー <Papers>___ー,No.1,Institute of Comparative Economic Studies,Hosei University. 1-23 (1990)
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[Publications] 五十嵐 一成: "トマス・ロペスの『地理歴史報告』を通じて見たる18世紀末葉のアルバセ-テ地方の経済・社会・法制(上)" 『札幌大学教養部紀要』. 第38号. 1-30 (1991)
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[Publications] 斎藤 修: "The changing structure of urban employment and its effects on migration pattern in eighteenthーand nineteenthー century Japan" A.van der Woude <et>___ー <al>___ー.(eds.),<Urbanization in History: A Process of Dynamic Internactions>___ー Oxford U.P.205-219 (1990)
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[Publications] 斎藤 修: "経済発展と女性労働:日本的経験" 『経済研究』. 第42巻. 31-41 (1991)