1992 Fiscal Year Annual Research Report
中海・宍道湖の環境変遷-風土記時代と現在の比較からみた将来予測-
Project/Area Number |
01400003
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Research Institution | SHIMANE UNIVERSITY |
Principal Investigator |
徳岡 隆夫 島根大学, 理学部, 教授 (30025358)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 義昭 島根大学, 法文学部, 教授 (70144681)
三瓶 良和 島根大学, 理学部, 助手 (00226086)
鈴木 徳行 島根大学, 理学部, 助教授 (00144692)
高安 克己 島根大学, 汽水城研究センター, 教授 (00127490)
大西 郁夫 島根大学, 理学部, 教授 (40032445)
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Keywords | 中海・宍道湖 / 完新世地史 / 自然環境学 / IGBP / 風土記(奈良)時代 / マッドランプ |
Research Abstract |
中海飯梨川河口のマッドランプについて前年に引続き調査を行い、新たに歪計および傾斜計を用いて変位の連続観測を行った。デルタの先端部とマッドランプ上のボーリング資料の分析からは2度目の出現の島は最初より回転を伴って全体として数m上昇したものであることがわかった。連続観測では92.8月〜93.1月は動きが認められず、2月に島の10度の回転があり、3月に元に戻った。歪計では深度10mと25mに連続的に変位が認められ、2層の滑り面の存在が明かとなった。マッドランプは潮位の下がる3月には再動の可能性があることと、デルタの先端での載荷実験が今後の課題となった。ミシシッピのマッドランプとは成因が異なり、その形成はダイアピルよりも円狐状すべりが基本的なものであることが明らかになった。考古学調査としては、出雲平野の大集落趾矢野遺跡の発掘と周辺域踏査を実施、縄文後期以降急速な沖積化進行によって形成された山雲平野では弥生〜古墳時代初期の海水面最高水準は、少なくとも2m以下であることが確認できる。大学前の原の前遺跡の調査では、縄文後期から近世に至る生活跡および遺物の再堆積層が海面変動の解明に重要な意義をもつことが明らかになった。汽水河口域の時代的な位置の変化はわずかな海面変動を鋭敏に反映するものであることが明らかになり、IGBPのPAGESの研究に今後貢献する見通しが得られた。中海・宍道湖の環境改善では本庄工区の土地利用と中海の覆砂事業が進行中で、底質と湖底現環境についての本研究成果をせもとにこれらに関わって積極的な貢献をなした。 中海・宍道湖は干拓・淡水化事業が中断したままになっていて、今後の具体的なあり方を早急に決めなければならない状況にあり、本庄工区への海水導入による漁業の復活、および中海の覆砂は本研究にもとづく具体的な提言である。
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Research Products
(11 results)
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[Publications] Sampei,Y.,Nakai.T.,Sazuki,N.and Sakiguchi,K: "Methylphenanthrene distribution in the MITI-Takadaheiya well and alterated shale shale by ignious intrusion from Shinjo Basin in Noygeast Japan." Geochemical Journal. (1992)
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[Publications] 三瓶 良和,吉田 憲司,平松 健,鈴木 徳行,松本 英二: "粘土鉱物および全有機・炭素・全窒素濃度からみた宍道湖底堆積物の特徴" Reserches in Organic Geochemistry. 8. (1992)
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[Publications] 高安 克巳: "中海・宍道湖の自然史と望ましい環境づくり" 第1回環境地質シンポジウム論文集. 273-278 (1991)
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[Publications] 国井 秀伸: "中海に流入する河川の水生植物相の予備調査結果" 汽水湖研究. 1. 77-80 (1991)
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[Publications] 国井 秀伸: "宍道湖に流入する河川の水生植物の現況" 汽水湖研究. 2. 61-70 (1992)
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[Publications] 橋谷 博,奥村 稔,藤永 薫,近藤 邦男,清家 泰: "宍道湖・中海の水質変動に与える気象・海象の影響-その2 1982〜1991年の水質変動と気象5因子" 山陰地域研究(自然環境). 8. 69-86 (1992)
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[Publications] 田中 義昭: "山陰地方における古代生産の研究" 古代金属生産研究会. (1992)
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[Publications] 徳岡 隆夫: "汽水城の“望ましい環境づくり"における地質学の役割-中海・宍道湖を例として-" 地質学論集. 39. 167-172 (1993)
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[Publications] 徳岡 隆夫: "湖沼への招待-底質に秘められた歴史と環境-" 地質学論集. 39. 177-189 (1993)
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[Publications] 大西 郁夫: "中海・宍道湖周辺地域における過去2000年間の花粉帯と植生変化" 地質学論集. 39. 33-39 (1993)
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[Publications] T.Tokuoka,S.Yamauchi Y.Sanpei,Y.Miyata: "Mudlumps Formed at the Mouth of the linashi River,Shimane Prefecture,Japan." Landslide News. 6. 24-26 (1992)