Research Abstract |
土壌中の水・物質移動に大きく影響を及ぼす,土壌の間隙,とくに管状の大間隙(孔隙)の構造を把握するために,軟X線非破壊検査装置を用いて造影剤を注入した土壌を撮影し,その分布を写真上に再現することが可能となった。この手法を用いて,(1)灰色低地土(水田・畑),(2)非火山灰性黒ボク土(水田・畑),(3)褐色低地土(水田)を,新たに開発したジュラルミン製サンプラ-によって現地採取し,各プロファイルの孔隙分析を,ステレオ撮影した。この結果,土壌や土地利用,水田耕作作業などと孔隙構造形成との関係が明確に説明された。また,各土壌の保水性・透水性との関係をも評価することができた。 一方,撮影された間隙写真を画像処理し,間隙構造を定量的・統計的に分析する手法の基礎的部分を開発した。この作業は,昨年度導入したイメ-ジワ-クステ-ションにより行ったが,間隙径の測定技術を開発検証し,それを用いて実土壌の間隙分布の算定が可能となった。この方法によって得られた同分布によって推定される土壌水分特性曲線と,別途独立して行った物理実験結果を比較して,透水性に大きく寄与する大孔隙については,その分布をある程度の精度で把握できる可能性が示された。また,造影剤の注入法・撮影法・画像処理法についての課題も整理された。 ステレオ撮影された2枚の孔隙写真を用いて,その3次元分布状況を再現することも可能となった。また,土壌中を物質(造影剤・水)が流動する状況を,直接把握し,VTRに記録し,その速度を直接測定することも可能となった。 さらに,土壌中の水・熱移動現象をモデル化することも進めた。以上の如く,本年度は,課題の中心的部分である土壌構造の定量的把握を進め,水・物質移動との関係について基礎的検討を加えた。
|