Research Abstract |
実験的検討:(1)実験的十二指腸潰瘍作成薬剤であるシステアミン300mg/kgを皮下投与すると,血清ガストリン値は上昇し,幽門,十二指腸の組織ガストリン含有量は減少した。血漿ソマトスタチン値は減少し,組織含有量はいずれの部位でも増加した。(2)ヒスタミンH_2ー受容体拮抗剤(ファモチジン,15mg/kg),プロスタグランディンE製剤(E_1,E_2,100μg/kg)をラットに28日間投与すると,ファモチジン単独投与では幽門部ガストリン細胞のみが増加したが,プロスタグランディン併用投与では,ソマトスタチン細胞数の増加も認められ,ファモチジン慢性投与による血清ガストリン値の上昇を抑制する傾向にあった。(3)幽門狭窄ラットでは,28日後に血清ガストリン値の幽門部ガストリン細胞数,ソマトスタチン細胞数の増加が認められた。しかし,ファチジン投与によりソマトスタチ細胞の増加は抑えられた。狭窄下におけるソマトスタチン細胞の増加は,高酸,高ガストリン血症抑制に働くが,ファモチジンはその抑制系の変化を抑えることになる。またソマトスタチン細胞増加については,プロスタグランディンの関与が必要である。 臨床的検討:(1)十二指腸潰瘍症例での検討では,穿孔例は基礎酸分泌量インシュリン刺激最高酸分泌量が高く,狭窄例では基礎ガストリン分泌量,アドレナリン刺激ガストリン分泌量の増加が認められた。(2)βー受容体拮抗薬(プロプラノロ-ル)投与下に,胃液検査(アドレナリン負荷試験),24時間胃内pHモニタリングを施行した。βー受容体拮抗薬の投与は,ガストリン分泌,特に刺激ガストリン分泌を完全に抑制したが,酸分泌に関しては,抑制を示す症例と変化のない症例が存在し,その胃酸分泌機構に関しては,βー作用の抑制系の関与も考慮にいれなければならない。治療上においては,アドレナリン刺激酸分泌の高い十二指腸潰瘍症例は幽門洞切除が必要である。
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