Research Abstract |
1 有核構造を持つ脆性材料である歯科用セメントの破壊面は,静的破壊と動的破壊とのあいだに特有の違いが観察された。 2 人歯象牙質を用いた動的疲労試験の結果は,静的破壊では,破断は象牙細管の方向と全く無関係であったが,動的破壊においては破壊の起点は複数が観察され,破壊の伸展には象牙細管の走行方向が関与している像も観察された。また,延性破壊を思わせるDimpleが観られた箇所もあった。 3 歯根の動的疲労破壊の挙動を調べる目的で,内径1.6mm,ピッチ0.45mmのネジを切った模擬歯根を用い,これに適合する金属製スクリュ-ポストを挿入したものを試験片として用い,これに負荷波形をHsine,Htriangle,Hsqure,Sineの四種,最小負荷荷重1kgf,最大負荷荷重12〜50kgf,周波数0.3〜10Hzの範囲で繰返し引張荷重を与え,亀裂発生までの負荷回数,破断までの負荷回数,亀裂の伸展速度などを求めた。 4 その結果,スクリュ-ポストの入った模擬歯根の場合のSーN曲線には明瞭な水平部は現れなかった。また,疲労による亀裂は,全ての場合に挿入されているスクリュ-ポストの最先端部のネジ山(歯根の側からはネジの谷)の先端に発生し,亀裂はスクリュ-ポストのネジ山に沿って回転するように伸展し,最後はネジ山の1ピッチ分だけ縦に破壊を生じて破断した。 5 負荷荷重が同じでも,波形が異なると亀裂発生および破断までの負荷回数に差が認められた。また,ポストをセメントで合着した場合の方が,セメントで合着しないポストの場合より,疲労限度は大きかった。また,亀裂の伸展速度は,負荷荷重が30〜15kgfの間はほぼ同じであったが,15kgf以下の低荷重の場合には伸展速度は減少する傾向が認められた。
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