Research Abstract |
筆者らは既に提唱してきた臨床診断仮説U(以下U仮説)に基づいて,一定条件を具有する症例30例を追跡研究して10年経過した。その概要は,「心身障害学研究」,13(1),57〜64PP,1988年に詳しい。症例選択は(1)突発型吃音,(2)循環性を有する,(3)吃音歴1年,(4)家族構成;両親と兄弟2人,(5)治療・指導歴なし,以上の5条件を厳守した。症例数30例はすべて自験例に限定し,U仮説による16類型を適用し考察を以下に試みた。 1)U仮説の16類型と適応症例について:Uー1型;9例,Uー2型1例,Uー3型7例,Uー4型13例であった。またAー1型11例,Aー2型9例,Bー1型4例 Bー2型6例に分類できた。Uー1〜Uー4型の分類は,内面条件に基づくものでUー1型とは,RgXDとRgXRの両因子とも良好,Uー4型は両因子とも不良なものを示し,その中間,つまりどちらかの因子が良と不良になるものである。また,Aー1型はD,R両因子とも良好、Bー2型(両因子とも不良)Aー2型(D因子が良好,R因子不良),Bー1型(R因子良好,D因子不良),外面因子をさす。 2)予後率の良否と類型との対比について:最高の予後率100%の症例のうち、1年以内の症例6例,1例(Uー3型)を除きすべてUー1型。また予後率2年以降100%の場合には、5例。うちAー2型3例,Aー型2例であった。予後率の悪い40%以下の症例6例はすべてUー4型で,うちBー2型3例,Aー2型1例,Bー1とAー1型共々1例であった。 <結論>___ー:U仮説の内面的条件が良好な症例,すなわちUー1型の予後は確実に改善がもたらされることが臨床的実験治療研究の結果判明し,検証された。また逆に,Uー4型すなわち不良な症例では,予後率が低下して,改善に要する年数も増加することが立証された意味は多大である。つまり,吃音児の治療・指導においては,内面的条件を重視し、その改善に長期的展望を考慮する必要があり,改善の維持もこれに依存する。
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