1989 Fiscal Year Annual Research Report
高分解能コンプトン散乱による液体金属の電子運動量分布
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01460039
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
伊藤 文武 群馬大学, 工学部, 教授 (60005907)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奈良 久 東北大学, 教養部, 教授 (90005752)
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Keywords | コンプトン散乱 / コンプトンプロファイル / 放射光 / 液体金属 / フェルミ運動量 / リチウム / ナトリウム / インジウムアンチモン |
Research Abstract |
今年度は高エネルギ-研究所に建設中のコンプトン散乱装置の立上げにまず全力を注いだ結果、運動量分解能を0.08原子単位をもつまで高分解能コンプトン装置が達成できた。この分解能は現在コンプトン散乱測定上の世界最高記録を誇るものである。 次にこの装置を用いて液体金属のコンプトン散乱測定を行うため、500℃まで昇温可能な真空チャンバ-を設計試作した。購入されたタ-ボ分子ポンプと接続することにより、最高10^<-8>Torrの真空度が達成できた。 、次いでリチウム、ナトリウム金属ならびにその合金について固体状態ならびに液体状態におけるコンプトンプロファイルを10^<-6>Torr以上の高真空度で測定することが出来た。得られたコンプトンプロファイルを調べた結果、両金属とも液体になるとフェルミ運動量が減少しかつ運動量分布関数がボケルこと、また液体状態同志の比較よりリチウム金属の運動量分布のボケがナトリウム金属のそれより大きいことがわかった。しかし、これらのボケ量は比較的小さく、自由電子金属モデルから著しくずれるものではなかった。ところが、リチウム-ナトリウム合金液体のコンプトンプロファイルは自由電子モデルから著しくずれ、フェルミ面のボケが15%にも達することがわかった。これは液体合金における原子ポテンシャルのランダムさが原子位置のランダムさより電子運動量分布への影響が大きいことを示すものである。 一方、理論的アプロ-チとしては擬ポテンシャルに基づくバンド理論により、インジウム-アンチモン化合物のコンプトンプロファイルが圧力により構造が亜鉛テルル形構造から岩塩構造型に変わり、それに伴い電子的性質も共有結合的性質から金属結合的性質に移転する様子を調べた。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] F.ITOH: "High-Resolution Compton Profile Spectrometer for 29.5-KeV X-rays with a Combination of Crystal analyzer and Imaging Plate" Review of Scientific Instrumets. 60. 2402-2405 (1989)
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[Publications] N.Sakai: "Challenge to Precise Magnetic Compton-Profile Measurements" Review of Scientific Instruments. 60. 1666-1670 (1989)
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[Publications] N.Sakai: "High-Resolution Compton Profile of Si Using 29.5keV Synchrotron Radiation X-Rays" Journal of the Physical Society of Japan. 58. 3270-3279 (1989)
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[Publications] K.Kobayasi: "Coexistance of Metallic and Bonding Characters in InSb with Roch-Salt Structure" Portugaliae Physica. 18. (1989)
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[Publications] F.Itoh: "High Resolution Compton Profile Measurements Using 29.5 keV Synchrotron Radiation" Portugaliae Physica. 18. (1989)
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[Publications] F.Itoh: "High Resolution Compton Profiles of Liquid Li,Na and Li-Na Alloy" Journal of Non-Crystalline Solids. (1990)
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[Publications] 伊藤文武: "シンクロトロン放射利用技術 第2章第3節 コンプトン散乱" サイエンス フォ-ラム(株), 417(7) (1989)