1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01460214
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
橋本 英二 広島大学, 理学部, 助教授 (50033907)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小杉 俊男 広島大学, 理学部, 助手 (10153545)
上田 善武 広島大学, 理学部, 助手 (80106799)
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Keywords | 金属中のヘリウム / 固体内拡散 / ガス放出法 / 格子間原子 / イオン照射 |
Research Abstract |
本研究の目的は、金属にヘリウムイオンを照射し、照射中のヘリウム透過・照射後のヘリウム放出の測定から、金属中のヘリウムの格子間拡散の知見を得ようとするものである。本年度は、まず、昨年度製作した透過装置を用いて、ヘリウム透過の測定を試みた。しかし、100K付近にまで温度を下げても、ヘリウムの透過は観測されなかった。これは、照射の初期において、ヘリウムが既に原子空孔に捕獲された状態にある為と考えられる。そこで、ヘリウム放出の精密測定を行い。格子間拡散が実験的に促えられるかどうか、その可能性を追求した。なお、この場合にも、昨年度購入したイオン銃・タ-ボ分子ポンプは、試料表面の汚染除去・高真空中でのヘリウムの放出実験に不可欠であった。実験は、アルミニウムに、1x10^<15>〜5x10^<16>He^+cm^<-2>のヘリウムイオンを室温照射し、室温〜900℃までの加熱中に放出されるヘリウムを四重極質量分析計で測定した。ヘリウム放出曲線には二つの鋭いピ-クが観測された。高温側のピ-クは、いずれの照射量においても、試料が融ける直前に現れ、一方、低温側のピ-クは照射量の増加と共に顕著になり、しかも、低温側へ移動する。この低温側のピ-クは、微小なヘリウムバブルの内圧が温度上昇に伴って高くなり、その圧力緩和の為にバブルより急激に放出されるヘリウムによるものと考えられる。したがって、この放出過程の温度依存を詳細に調べることにより、ヘリウムの格子間拡散に関する知見が得られる可能性がある。そこで、100〜250℃の範囲で、5〜10℃ずつ温度を急激に上昇させて、その前後のヘリウム放出速度を精密に測定し、活性化エネルギ-を評価した。得られた値は約0.3eVで、この値は、理論的に予測されている、アルミニウム中のヘリウムの格子間拡散の活性化エネルギ-近いものである。
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