1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01470011
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
菅 宏 大阪大学, 理学部, 教授 (40028098)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山室 修 大阪大学, 理学部, 助手 (20200777)
松尾 隆祐 大阪大学, 理学部, 助教授 (00028185)
|
Keywords | 樟脳ラセミ体の熱力学 / 相転移 / 残余エントロピ- / チオフェンの相挙動 / チオフェンーベンゼン2成分系 / ガラス転移 / 整合ー不整合相転移 |
Research Abstract |
最初に予定した樟脳のd体、及び光学活性体二成分系としてのラセミ体結晶については熱容量測定が終り、両者のエントロピ-の解析によってラセミ体の相転移がdー及びlー体両分子の重心並びに配向の秩序化の2つの過程から成立っていることが確認されたので、これを国際誌に発表した。文献で報告されていた100K付近でのラセミ体の誘電分散が、試料の十分なアニ-ルによってどう変化するかは大変興味深い問題で、近い将来に追求したい。これに必要な単結晶切断装置は充分に整備された。 チオフェン・ベンゼン二成分系については、x=0.003より1.0まで12種類の固溶体の熱容量測定を終了し、予期通り準安定相系列のII_2ーII_1相転移温度がベンゼン濃度と共に急激に低下する特異な不純物効果を発見した。これはII_1相が不整合相であるとするX線の結果を裏付けるもので、不整合相は不純物によるピン止め効果の為、微量のベンゼン固溶によって不整合相のまゝ凍結し、残余エントロピ-を生じるものと考えられる。特異な不純物効果のみを速報誌に発表し、全体の相図並びに分子運動に及ぼすベンゼン効果を別の国際誌に詳細に発表した。 次いで本年度購入の誘電率クライオスタットを使用し、チオフェンの安定及び準安定相両系列の誘電率を測定した。期待した通りに、従来の文献値はすべて準安定相に対するものであることを確認し、安定相について始めてその誘電率を測定した。その結果、VーIV相転移は整合・不整合相転移特有の振舞いを示すことを発見したので、そのベンゼン濃度依存性についても詳細に研究を進めた。それにより不純物添加試料に2種類の分子運動の存在を確認したので、これらの結果を速報誌に発表した。本年度購入のデ-タ収録装置、及び温度自動制御用部品の設置により測定は極めて安定、且つ迅速に行われるようになり、多くの固溶体試料についての研究を能率よく行いうることが可能となった。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] T.Nagumo,T.Matsuo and H.Suga: "Thermodynamic Study on Camphor Crystals." Thermochimica Acta. 139. 121-132 (1989)
-
[Publications] N.Okamoto,M.Oguni and H.Suga: "Doping Effect of Benzene on Phase Transitions on Thiophene." Solid State Communications. 70. 219-222 (1989)
-
[Publications] N.Okamoto,M.Oguni and H.Suga: "Calorimetric Study of Thiophene-benzene Solutions." Journal of Physics and Chemistry of Solids. 50. 1285-1295 (1989)
-
[Publications] J-J.Pinvidic,S.Takahara,O.Yamamuro and H.Suga: "Dielectric Study of Crystalline Thiophene." Solid State Communications. 72. 501-505 (1989)
-
[Publications] O.Yamamuro,N.Kuratomi,T.Matsuo and H.Suga: "Heat Capacity and Phase Transition of Acetone Clathrate Hydrate" Solid State Communications. 73. 317-321 (1990)
-
[Publications] N.Okamoto,M.Oguni and H.Suga: "Transition Phenomena in Thiophene Crystal." Thermochimica Acta. (1990)