1989 Fiscal Year Annual Research Report
ケイ素-ケイ素共役型二重結合化合物の合成と性質に関する研究
Project/Area Number |
01470019
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
松本 英之 群馬大学, 工学部, 助教授 (90008467)
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Keywords | ケイ素-ケイ素二重結合 / 合成 / 光反応 / オクタシラキュバン |
Research Abstract |
本研究の準備段階において、最初のオクタシラキュバン誘導体であるオクタキス(t-ブチルジメチルシリル)オクタシラキュバン(1)合成することができた。このオ-ルケイ素キュバンは紫外・可視領域に強い吸収を有する光反応性化分子であることがわかった。そこで、この特性を利用し、化合物1のケイ素-ケイ素共役型二重結合化合物への光変換を試みた。低温マトリィックス中(77K)で1に高圧水銀灯を照射すると、直ちにマトリィックスは褐色を帯び、685nmを極大値とする新しい吸収が現れた。この吸収は照射開始7分後にもっとも強くなった。なお、吸収極大値685nmはこれまで合成されたケイ素-ケイ素二重結合化合物(ジシレン)にくらべ著しく長波長側であり、ヘキサシラベンゼンのような新規共役二重結合化学種の生成を強く示唆する。なお、電子スピン共鳴において、シグナルは全く観測されなかったことより、シリルラジカルのような不対電子化学種がこの吸収に関与している可能性はほとんどないと考えられる。温めてマトリィックスをとかすと、この吸収は次第に消失するが、その半減期は200Kにおいて約1時間であった。したがって、室温条件下で685nmに対応する閉殼分子を単離し、その構造を定めることはむずかしいと思われる。現在、ケイ素-ケイ素二重結合化合物の良い捕獲剤であるウタノ-ルや2,3-ジメチルブタジエンの共存下で光分解を行い、685nmの吸収を与える不安定分子を捕獲し、その構造を定める作業を行なっている。来年度においては、これらの実験的証拠の収集のみならず、分子軌道法計算を行い理論面からの裏付けも行なう予定である。
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[Publications] H.Matsumoto: "The First Octasilacubane System:Synthesis of Octakis(t-butyldimethylsilyl)pentacyclo〕4.2.0.0^<2,5>.0^<3,8>.0^<4,7>〕-octasilane" J.Chem.Soc.Chem.commun.1083-1084 (1988)
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[Publications] H.Shizuka,H.Matsumoto: "Photolysis of Cyclotetrasilane,Remarkable Dependence on Molecular Structure" J.Chem.Soc.Faraday Trans.I. 85. 2369-2379 (1989)
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[Publications] H.Matsumoto: "Silicon-Branched Polysilanes in"New Aspects of Organic Chemistry I"(分担)" Kodansha-VCH, 565 (1989)