1990 Fiscal Year Annual Research Report
異相界面でのイオン移動と電子移動の相関性に立脚した選択的イオン分離の研究
Project/Area Number |
01470035
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木原 壯林 京都大学, 化学研究所, 助教授 (60161543)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宗林 由樹 京都大学化学研究所, 教務職員 (50197000)
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Keywords | 液々、液膜界面 / イオン移動 / 電子移動 / 液々界面電荷移動ボルタンメトリ- / 選択的イオン分離 / 理論と実験 / 界面電位差振動 / 振動機構 |
Research Abstract |
水相/有機相あるいは水相/膜界面でのイオン移動反応は、両相間のガルバニ電位差によって支配される。本研究は、両相中にそれぞれ酸化体(あるいは還元体)および還元体(あるいは酸化体)を加え、両相間のガルバニ電位差を微妙に制御することによって、精確なイオン分離を可能にしようというものである。以下、平成2年度の研究成果の概要を記す。 1.水相/有機相界面での電子移動反応の相互作用の理論的解釈. 平成元年度にはフェリシアン、フェロシアン、水酸イオンあるいはヒドロキノンなどを含む水相とフェロセン、テトラチアフルバレンあるいはテトラシアノキノジメタンなどを含む有機相との間での界面酸化還元反応(電子移動反応)を液々界面電荷移動ボルタンメトリ-によって測定し、電子移動反応を表わす理論式を導いた。また、電子移動反応は、両相中での添加分子(イオン)の標準酸化還元電位、濃度、拡散系数、活量によって表現できることを実証した。 平成2年度には、この理論式と液々界面イオン移動に関する理論式を組み合わせて、両電荷移動反応の相互作用を定量的に示し、実験結果を良く説明する理論を構築した。イオン移動と電子移動の相関性を利用すれば性質の似通ったイオンの相互分離が可能となる。上記の理論は生体膜界面での酸化還元とイオン移動反応の相互作用の解釈にも有用である。 2.液々、液膜界面電荷移動に伴う界面電位差の振動機構の解明. 液々、液膜界面をイオンが移動するとき、界面電位差の振動を伴えば、これがイオン分離に影響を与える。また、この振動現象は生体内刺激の発生と関係する。本研究では、液々界面イオン移動ボルタンメトリ-及び水相、有機(膜)相内でのイオン平衡測定法を駆使することによって、初めて同振動機構を次のように解明した。 液・液界面での振動は、2つのイオンi^z、j^zの交互移動に起因するが、振動を得るには、(1)両イオン移動の移動電位(ΔV)が界面の零電荷点を挟んで正負両側に分布しなければならず、(2)移動し易いイオンi^zのΔVでは吸着による攪はんを生じ、i^zが拡散律速以上の速度で移動する。(3)吸着種は、i^zを含むイオン対であり、(4)イオン対の吸着が飽和に近くなると、界面吸着による攪はんが弱まるためにi^zの移動が遅くなり、代わりにj^zが移動する。(5)j^zのΔVではイオン対は脱着解離するので、界面近傍のi^z濃度が上昇し、再びi^zが移動するので持続した振動となる。ここで、振動の振幅は、i^z、j^zのΔVの差であり、周期とパルス幅はイオン対の生成解離平衡および速度に依存する。
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[Publications] S.Umetani: "Adduct formation properties of monoー and bidentate phosphine oxide compounds in the liquidーliquid extraction of some divalent metals with 1ーphenylー3ーmethylー4ーbenzoylー5ーpyrazolone." Anal.Chim.Acta. 232. 293-299 (1990)
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[Publications] Z.Yoshida: "Stripping coulometry of trace amount of uranium with twin column electrodes of glassy carbon fibers." Proceedings of International Trace Analysis Symposium '90. 439-442 (1990)
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[Publications] 木原 壯林: "イオン選択性電極における選択性の液々界面ボルタンメトリ-に基づく解釈" 分析化学. 39. 661-669 (1990)
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[Publications] M.Suzuki: "Effect of temperature on ion transfer at the aqueous/organic solution interface studied by currentーscan polarography with the electrolyte solution dropping electrode." J.Electroanal.Chem.292. 231-244 (1999)
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[Publications] H.Mukai: "Steric effect of orthoーsubstituents of 1ーphenylー3ーmethylー4ーaroylー5ーpyrazolones on the synergic extraction of lutetium with trioctylphosphine oxide." Anal,Chim.Acta. 239. 277-282 (1990)
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[Publications] K.Maeda: "Voltammetric study on the oscillation of the potential difference at a liquid/liquid or liquid/membrane interface accompanied by ion transfer" J.Electroanal.Chem.295. 183-201 (1990)
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[Publications] S.Kihara: "Abiotic photosynthesis of substances relative to the origin of life from aqueous ammonium carbonate solutions" Bull.Inst.Chem.Res.,Kyoto Univ.68. 213-217 (1990)
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[Publications] K.Maeda: "Voltammetric interpretation of ion transfer coupled with the electron transfer at a liquid/liquid interface." J.Electroanal.Chem.(1991)
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[Publications] 木原 壯林: "溶媒の物性と溶質・溶媒相互作用" ぶんせき. (1991)