1989 Fiscal Year Annual Research Report
有明海の特異的環境下において化学物質はどう巡っているか
Project/Area Number |
01470039
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
飯盛 喜代春 佐賀大学, 理工学部, 教授 (50039244)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西河 貞捷 佐賀大学, 理工学部, 助教授 (40039293)
田端 正明 佐賀大学, 理工学部, 助教授 (40039285)
近藤 道男 佐賀大学, 理工学部, 教授 (30039250)
白濱 啓四郎 佐賀大学, 理工学部, 教授 (50039252)
大久保 正夫 佐賀大学, 理工学部, 教授 (30039276)
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Keywords | 有明海 / 浮泥 / リン酸イオン / 窒素化合物 / 干潟 |
Research Abstract |
有明海は半閉鎖的海域であり、北部沿岸では浮泥を多量に含む海水で干潮時には広大な干潟が出現する。この沿岸では河川水の影響が大きく、その中に含まれる化学成分の濃度は季節、天候、時間によって著しく変化している。有明海には生活排水を含む河川水が多量流入しているにもかゝわらず、まだ、赤潮の被害は報告されていない。これは、富栄養化成分であるリン・窒素の種々の化学種の成分が何らかの作用で海水系外に除去されているためと思われる。そこで、これらの機構を化学的に解明するために海水中に流入したこれらの化学成分の行動について検討を加えた。北部沿岸の河口から海域の10地点を選定し、干潮、満潮における海水の上層部、下層部を採水し、主要化学成分およびリン・窒素の種々の化学種の濃度を測定した。主要化学成分は河口においてはその濃度は低いが、河口から遠くなるにつれて徐々に濃度は高くなっている。これに反し、濁度(海水中の浮泥の量)は主要化学成分の濃度の変化と逆の傾向を示している。リン酸イオンの濃度も濁度と同じ傾向である。これは2つの成分が極めて密接な関係にあり、リン酸イオンが浮泥に捕捉され、浮泥の凝集沈殿によって底泥に移行するためであることがわかった。この機構については平成2年度に詳しく検討する予定である。また窒素の化学種についても検討したが、測定した化学種であるアンモニウム、亜硝酸、硝酸の各イオンは化学的に不安定でリン酸イオンのような傾向はみられず、極めて複雑な変化をしていることがわかった。今度、イオンクロマトグラフィを購入することができ、早速、これらイオンの測定を行っており、新しい知見が得られる予定である。海水の上層部と下層部の濃度差は、主要化学成分についてはほとんどみられないが、リン酸イオン、アンモニアイオン、亜硝酸イオン等については差異がみられた。
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