1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01470140
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
荻原 幸夫 名古屋市立大学, 薬学部, 教授 (70080166)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
能勢 充彦 名古屋市立大学, 薬学部, 助手 (60228327)
井上 誠 名古屋市立大学, 薬学部, 助手 (50191888)
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Keywords | 漢方方剤 / 小柴胡湯 / 大柴胡湯 / マクロファ-ジ / 貧食能 / グリチルリチン / 複合成分 / 生薬配合 |
Research Abstract |
漢方処方における生薬配合および複合成分の意義を探るために、本年度はまず方剤を成分の物性、分子量により分画し、それらの薬理活性をマクロファ-ジの貧食能を指標にして検討した。方剤としては、すでに我々がマクロファ-ジの貧食能を亢進することを明らかにしている小柴胡湯を使用した。結果は多糖の存在が考えられるエタノ-ル不溶性画分、サイコサポニン等いわゆる生理活性配当体やバイカリンなどのフラボノイド等の存在が考えられるエタノ-ル可溶性の分子量1000以下の画分に小柴胡湯が示すのと同程度あるいはそれ以上の活性が観察され、小柴胡湯によるマクロファ-ジ活性化には二つ以上の成分の存在、機構の存在が示唆された。次に、小柴胡湯の7つの構成生薬の配合による成分の量的変動、すなわち、抽出時における個々の構成生薬及び生薬成分の相互作用を甘草の主成分であるグリチルリチン(GL)の抽出効率を指標に検討した。2^6通りの可能な組み合わせすべての抽出を行ったところ、小柴胡湯の構成生薬の中でGL量を増加させるように働くのものは黄〓>大棗>柴胡>人参であり、逆にGL量を減少させるように働くものは生姜>半夏であった。また、この半夏、生姜によるGL量の減少は抽出残渣へのGLの吸着によることが明らかになった。さらに黄〓において、残渣への吸着が認められるにもかかわらず抽出量が増加していることから、黄〓には甘草からのGLの抽出効率を向上させる成分の存在が予想された。以上のことより、構成生薬の配合による成分量はただ単に各生薬の総和ではなく、抽出時の各生薬の相乗作用、あるいは相殺作用など複雑な因子が関与して決定されること、また、異なる物質による異なる機構を介しての同一薬効の発現は生体が変調をきたした際の恒常性維持のために絶好のシステムであることが示唆された。
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