1989 Fiscal Year Annual Research Report
生化学的父子判定に基づくニホンザルの父性の行動生態学
Project/Area Number |
01480006
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉山 幸丸 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (20025349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
庄武 孝義 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (00003103)
大沢 秀行 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (60027498)
竹中 修 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (00093261)
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Keywords | DNAフィンガ-プリント / 父子判定 / 乱婚的配偶 / ニホンザル / ミニサテライトDNA / 繁殖戦略 / 交尾戦略 / 順位 |
Research Abstract |
ニホンザル等乱婚配偶型の動物では父子の判定が行動観察によっては不可能であったため、繁殖戦略や父系の研究などがこれまで充分に行なえなかった。ところが、遺伝子の超可変領域が発見され、その多型を利用して乱婚配偶において父子の判定が可能となった。本研究はこの方法はこの方法を用いて、ニホンザルの父子判定を行ない、繁殖戦略研究に新しい道を拓こうとしたものである。この遺伝子の超可変領域は十数〜数十塩基の配列が単位となって十数〜数十回縦列に反復している構造を取り、その繰り返し数に多大な固体間変異性がある。本研究では、秋-冬期の繁殖期にニホンザルの交尾行動を観察し、生まれてきたこどもの父親を判定した。1.射精にいたる交尾はオスの社会的な順位と相関があるが、残したこどもの数は必ずしもオスの順位を反映していない。高位のオスからの妨害を受ける若いオスも少ない交尾に関わらず子どもを残している。2.オスは自分の母親を軸とする家系内のメスとの間には射精にいたる交尾もあるもののこどもを残していない。3.メスは特定のオスのこどものみ残すのではない。4.高順位オトナメスはオスからの求愛で交尾に至るが、他の低順位メス、若メスではその傾向は少なかった。5.高順位オトナメスでは求愛の程度の強いオスが受胎させている。しかし、若メスでは相互交渉のほとんど見られないペアにも受胎が生じていることが多かった等の結果が得られた。平成元年度は特にメスの排卵日前後の交尾相手とその結果として生まれてきた子供の父親の判定結果を比べることを目的とし、行動観察に加えて毎週一回4才以上の全個体から採血しホルモンレベルから排卵日を推定した。この結果は子ザルが誕生する平成2年の初夏以降の解析となる。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Hayasaka,k.,Horai,S.,Gojobori,T.,Shotake,T.,Nozawa,K.& Matsunaga E.: "Phylogenetic relationship among Japanese,rhesus,Formosan and crab-eating monkey,inferred from restriction-enzyme analysis of mitochondrial DNAs." Molecular Biology and Evolution. 5. 270-281 (1988)
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[Publications] Inoue,M.,Takenaka,A.,Tanaka,S.,Kominami,R.& Takenaka O.: "Paternity discrimination of Japanese monkey troop by DNA fingerprinting." Primates. 32. (1991)
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[Publications] Inoue,M.,Mitsunaga,F.,Ohsawa,H.,Sugiyama Y.,Gaspard,S.A.,Tanaka,S.,Kominami,R.& Takenaka,O.: "Male mating behavior and Paternity discrimination by DNA fingerprinting in a Japanese monkey troop" Folia Primatologica.
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[Publications] Mitsunaga,F.,Inoue,M.,Takenaka,O.Takenaka,A.,Sugiyama,Y.& Ohsawa,H.: "Behavioral variation of Japanese monkeys in mating season according to their rank and age" Primates(in preparation).
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[Publications] 井上美穂,竹中修: "DNAフィンガ-プリント法によるニホンザルの父子判定" 生物物理. 30. 33-36 (1990)
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[Publications] 井上美穂,竹中修: "DNAフィンガ-プリント法によるニホンザルの父子判定" 遺伝. 43. 40-41 (1989)
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[Publications] 庄武孝義、峰沢満(分担執筆): "“サルの遺伝学的実験法"黒田行昭編「動物遺伝学実験法」" 共立出版, 346 (1989)
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[Publications] 杉山幸丸: "サルはなぜ群れるのか" 中央公論, 202 (1990)