1989 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫の長距離飛行の分子的メカニズム:リポホリンとアポリポホリン-III
Project/Area Number |
01480020
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
茅野 春雄 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (00012253)
|
Keywords | トノサマバッタ / 長距離飛行 / リポホリン / ジグリセリド / アポリポホリン-III / アディポキネティックホルモン / 脂肪体 / Caイオン |
Research Abstract |
本年度は研究上の大きな進展があり、次の2つの主要な成果をあげることができた。 1.アディポキネティックホルモン(AKH)の作用機構について。AKHをバッタの脂肪体とインキュベ-トし、脂肪体中のDGのレベルが上昇するかどうかをしらべ、さらにこの脂肪体を再びバッタの血液とをインキュベ-トし、リポホリンによる脂肪体からのDGの取り込みにAKHが関与しているかどうかをしらべた。その結果,AKHは直接脂肪体に働き、脂肪体のDGのレベルを顕著に増大させること、このAKHの作用にはCaイオンが必須であり、したがってAKHの直接作用は、脂肪体の細胞膜におけるCaイオンの流入を促進させることにあり、その結果、lipaseが活性され、TGからのDGの生成が促進させると結論した。また、リポホリンによる脂肪体からのDGの積み込みには、AKHは全く関与していないことも明かにした。 2.バッタにAKHを注射すると、High Density lipophorin(HDLp)がLow density lipophorin(LDLp)に変わることが明かになっているが、このLDLpの性質については、尚いつくかの不明の点が多い。本年度は、この中で最も基本的な問題である、LDLpに結合するアポ-IIIの量を正確に決定した。その結果、LDLp1分子に対して最高13分子、最低7分子のアポ-IIIが結合し、最も多くの場合、9分子のアポ-IIIが結合することを明かにした。また、LDLpは分子サイズがきわめて不均一になることも以前に報告したが、この不均一性は事実であり、この不均一性は、LDLp分子の分子間融合によって引き起されるという、我々の説を支持する多くの証拠を得ることもできた。
|
-
[Publications] 茅野春雄,平山雄二: "Lipid transfer particle of locust hemolymph" Journal of Lipid Research. 31. 5 (1990)
-
[Publications] ラム・ペッキィ-,茅野春雄: "The primary role of adipokintic hormone in the formation of low density lipophorin in locusts." Journal of Lipid Research.
-
[Publications] 長尾恵理子,茅野春雄: "Further characterization of low density lipophorin induced by adipokinetic hormone in locusts." Journal of Lipid Research.