1990 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫の長距離飛行の分子的メカニズム:リポホリンとアポリポホリン・III
Project/Area Number |
01480020
|
Research Institution | Institute of Low Temperature Science, Hokkaido University |
Principal Investigator |
茅野 春雄 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (00012253)
|
Keywords | トノサマバッタ / ゴキブリ / 長距離飛行 / 脂肪体 / グリセリドプ-ル / トレハロ-ズ / リポホリン / アポリポホリンーIII |
Research Abstract |
本年度はこの研究の最終年度であり,リポホリンの生理作用,とくに昆虫の長距離飛行に関連して,次のような重要知見がえられた。 1.昆虫の血液糖であるトレハロ-ズはリポホリンによる脂肪体からのジグリセリド(DG)の積み込みを阻害する。この発見は次の観点からみて,きわめて重要である。即ち,DGが脂肪体中に存在する限り,このDGは自動的にリポホリンによって積み込まれると考えられてきた。もしそうならば,休止期においてもDGは絶えず脂肪体から消失し,長距離飛行のための燃料はいたずらに浪費されることになる。今回の発見によって,トレハロ-ズレベルが高いとき,DGの積み込みは押えられ,長距離飛行の開始に伴って,トレハロ-ズレベルが急速に低下すると,この阻害が解除され,DGの積み込みが開始されることになる。 2.長距離飛行の分子的メカニズムをさらに解明するため,飛行可能な代表として,群生相のバッタを,不能な代表として,ブキブリと孤独相のバッタをえらび,飛行の可能,不可能が何に起因するかをしらベた。その結果,次のようなことが明白となった。ゴキブリの血液にはアポリポホリンーIIIが欠落しているだけでなく,脂肪体中のDGプ-ルがきわめて低い。また、孤独相のバッタでは,血液中にはアポリポホリンーIIIは存在するが,脂肪体そのものがきわめて貧弱であり,含まれるトリグリセリドの量は群生相のそれの1/(10)以下であり,したがって,一個体中に含まれるTGの量は孤独相では群生相の凡そ1/(100)以下であることが判明した。以上の結果は孤独相では長距離飛行に必要な燃料そのものが,欠乏していると断定できる。
|
-
[Publications] 平山 雄二,茅野 春雄: "Lipid transfer particle in locust hemolymph:Purification and characterization." Journal of Lipid Research. 31. 793-800 (1990)
-
[Publications] ラム・ペッキ-,茅野 春雄: "Primary role of adipokinetic hormone in the formation of low density lipophorin in locusts." Journal of Lipid Research. 31. 2039-2044 (1990)
-
[Publications] ラム・ペッキ-,茅野 春雄: "Trehalose,the insect blood sugar,inhibits loading of diacylglycerol by lipophorin from the fat body in locusts" Biochem.Biophys.Res.Commun.172. 588-594 (1990)
-
[Publications] 長尾 恵理子,茅野 春雄: "Further charactrization of low density lipophorin induced by adipokinetic hormone in locusts." Journal of Lipid Research. 32. (1991)
-
[Publications] 茅野 春雄,ラム・ペッキ-,長尾 恵理子,平岡 毅: "Bioenergetic essentials for long distance flight in insects." Journal of Comparative Physiology.