1990 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエ神経系の後期発生におけるニュ-ロブラスト分化の遺伝制御機構
Project/Area Number |
01480030
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
谷村 禎一 九州大学, 教養部, 助教授 (20142010)
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Keywords | ショウジョウバエ / 神経発生 / ニュ-ロブラスト / エンハンサ- |
Research Abstract |
後期神経発生の遺伝制御機構を解明するために、今年度はエンハンサ-トラップ法を利用した研究を進めた。エンハンサ-トラップ法とは、既知の弱い活性を有するショウジョウバエのプロモ-タ-に連結した大腸菌のβーガラクトシタ-ゼ遺伝子(lacZ)を、P因子を介してゲノム上のランダムな位置に挿入させ、lacZの発現により組織特異的な遺伝子発現を検出するものである。lacZが組織特異的な発現を制御するエンハンサ-配列の近傍に挿入されると、エンハ-サ-の特異性を反映してlacZが発現されるため、酵素活性染色により特定の遺伝子発現を組織上(<in>___ー <situ>___ー)で見ることができる。新たに確立した系統も含め約800系統について、3令幼虫の中枢神経系および成虫原基の感覚細胞の前駆細胞にlacZの発現が見られる系統をスクリ-ニングした。ヒ-トショックタンパク質のプロモ-タ-を用いた系統(Hシリ-ズ)では、lacZの発現が細胞質にも認められた。Hシリ-ズの2系統については、軸索にも強いlacZの発現があり軸索の走行を追うことができた。これらをも含めた数系統について、発生段階によるlacZ発現パタ-ンの変化を明らかにし、唾腺染色体の<in>___ー <situ>___ー hybridizationによりlacZの挿入部位を決定した。成虫原基の感覚細胞の前駆細胞にlacZの発現が見られた系統のうち1系統は、最近、Rubinらによって発表されたscabrous遺伝子にlacZが挿入されていることが判明した。複数の系統について、P因子の再切り出しによる欠失突然変異体を分離した。欠失系統は致死となり、挿入部位の近傍に存在する遺伝子が胚期の発生にとっても必須であることが明らかになった。
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[Publications] Nagao,T.,Tanimura,T.& shimozawa,T.: "Neurohormoral control of the mating interval in the male cricket,Gryllus bimaculatus." Journal of Comparative Physiology. 印刷中. (1991)
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[Publications] 谷村 禎一,木村 賢一: "ショウジョウバエの神経・筋ミュ-タント" 「蛋白質 核酸 酵素」臨時増刊号「神経生化学」. 35(4). 434-441 (1990)
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[Publications] 木村 賢一,谷村 禎一: "筋細胞死の制御遺伝子" 「細胞工学」. 9(1). 55-61 (1990)
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[Publications] 谷村 禎一: "エンハンサ-トラップ法を用いたショウジョウバエ神経系発生へのアプロ-チ" 「生物物理」. 30(6). 14-17 (1990)
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[Publications] Teiichi Tanimura: "Chemical Senses vol.3 Genetics and perception and commnication.(ed.Wysocki,C.J.and Kare,M.R.)" Marcel Dekker Inc., 12 (1990)
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[Publications] 谷村 禎一: "「現代動物学の課題」日本動物学会編7巻「行動」久田 光彦、岡島 昭編" 学会出版センタ-, (1991)