1989 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫の体表から発散される揮発性物質の抗かび作用に関する研究
Project/Area Number |
01480050
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
岩花 秀典 東京農工大学, 農学部, 助教授 (90038240)
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Keywords | 抗糸状菌物質 / 昆虫の生体防御 / 揮発性生理活性物質 |
Research Abstract |
鞘翅目昆虫のセンノカミキリ幼虫の体表から揮発される物質に抗かび作用があることを明らかにした。この物質は既に報告されている昆虫の表皮に含まれる抗糸状菌物質カプリル酸、カプリン酸とは異なるものであることを明らかにし、この抗かび作用の生物検定用の装置を作製した。この物質による抗かび活性は一般糸状菌(Aspergillus niger,Panicillium notatumなど)、昆虫病原糸状菌(Beauveria bassiana Metarrhizium anisopliae,Conidiobolus coronatusなど)、植物病原糸状菌(立枯病菌、Rhizoctonia solani、萎凋病菌 Verticillium albo-atrum,Verticillium clahliaeなど)と糸状菌全般に認められることを明らかにした。この物質は細菌に対しては抗菌活性を示さなかった。この物質の性状として、活性炭やガラス表面、寒天培地の表面などに吸着される揮発性物質であることが明らかになり、その抽出方法もわかった。この物質はセンノカミキリ幼虫が排出する糞やその死体からは発生せず、生きた幼虫の体表から発散されることがわかった。その活性の強さは2〜3頭の幼虫から発散される量でも十分に抗菌活性が認められる程であった。 この揮発性物質による抗かび作用の作用機構はこの物質が分生胞子の発芽を一定の時間抑制し、つづいて菌糸の伸長を著しく阻害することが明らかになった。この揮発性物質を吸着させる担体も明らかになったので今後は、この物質を分離・精製し、その物性を明らかにする。本実験に用いた昆虫以外の昆虫にも揮発性の抗かび物質の存在が明らかになったので、この現象が昆虫一般に認められる生物の基本的機能かを明らかにしたい。また、この物質が全く新しいタイプの抗かび剤の素材になれるかをも検討したい。
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