1989 Fiscal Year Annual Research Report
血管内皮細胞由来の新規血管収縮物質エンドセリンの生理活性に関する研究
Project/Area Number |
01480102
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 晃一 東京大学, 農学部, 助手 (90205914)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
唐木 英明 東京大学, 農学部, 教授 (60011912)
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Keywords | 平滑筋 / エンドセリン / 内皮依存性弛緩物質 / カルシウム蛍光指示薬 / 細胞内カルシウム濃度 |
Research Abstract |
本研究では血管内皮細胞由来の収縮物質エンドセリンを用いて、各種平滑筋に対する作用を検討し以下の知見を得た。 1.マグヌス法を用いてエンドセリンの収縮を比較した。その結果、エンドセリンがラット胸部大動脈平滑筋に作用して収縮を起こすとともに、内皮細胞に作用して弛緩物質を放出し弛緩を起こすという二重作用を持つことを明らかにした。 2.細胞内カルシウム蛍光指示薬fura-2をもちいて、平滑筋の収縮と細胞内カルシウム濃度の同時測定を行なった。ラット大動脈においてエンドセリンは、細胞内カルシウム濃度の増加を伴う収縮張力の発生を引き起こすが、他の作動薬と比べ少ないカルシウムでより大きな収縮を起こした。また、エンドセリンによる細胞内カルシウムの増加はカルシウムチャネル拮抗薬により完全に抑制されたが、収縮張力は一部抑制されただけであった。さらに、エンドセリン存在下で外液カルシウム除去により細胞内カルシウム濃度は静止レベル以下まで減少したが、張力は一部残存した。 3.正常栄養液中、ラット大動脈のエンドセリン投与による反応は、細胞内カルシウム濃度の速い増加に比べ、収縮張力の増加は緩やかだった。外液カルシウム除去液中においても、エンドセリン適用により一過性の速い細胞内カルシウム増加が観察されるが、張力は遅れて緩やかに発生した。 4.Triton-X処理によるモルモット盲腸紐およびイヌ腸間膜動脈の脱膜標本(スキンドファイバ-)に対し、エンドセリンは作用を示さなかった。 以上の成績より、以下のことが示唆された。 (1)エンドセリンは内皮細胞に作用し血管内皮依存性弛緩物質(EDRF)を放出し弛緩を起こす。 (2)エンドセリンは平滑筋細胞に直接作用して、細胞内カルシウム貯蔵部位からのカルシウム放出と、カルシウムチャネルを介したカルシウム流入により細胞内カルシウム濃度を増加する。 (3)エンドセリンは収縮の初期相では収縮機構のカルシウム感受性を抑制し、収縮の持続相では感受性を増加する。 (4)エンドセリンはカルシウム非依存性の収縮を起こす。 (5)エンドセリンによる感受性増加作用は、細胞内情報伝達系を介した作用と考えられる。 さらに、血管平滑筋以外の標本を用いて検討を行った。 5.エンドセリンによる収縮張力および細胞内カルシウム濃度の増加作用は、イヌ気管、モルモットおよびラット子宮に対しては強く表れたが、ラット精管、モルモット盲腸紐、回腸縦走筋に対しては作用が弱かった。 6.性周期の各時期(黄体期、発情期、妊娠期)のラット子宮のエンドセリン感受性には、明らかな差がみられた。 以上の作用については現在さらに検討を続けているが、今後は、エンドセリンの作用の部位差、臓器差の原因の解明が重要であると考えられる。
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[Publications] K.Ozaki: "Endothelin dissociates muscle tensron from cytosolic Ca^<2+> in vasculor smooth muscle of rat cartid artery." Japan.J.Pharmacol.50. 521-524 (1989)
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[Publications] K.Sakata: "Effects of endothelin on the mechawical actiuity and cytosolic calcium levels of variaes types of smcoth muscle." Br.J.Pharmacol.98. 483-492 (1989)