Research Abstract |
ラット脊髄より厚さ120μmの横断スライスを作製(,)マルスキ-顕微鏡下に、運動ニュ-ロンを直視同定して,パッチ電極によるwholeーcell記録を行なった。近傍の介在ニュ-ロンを細胞外刺激して,抑制性シナプス電流(IPSC)は,ストリキニ-ネによりブロックされた。刺激強度を徐々に上昇させると,ある強度で,IPSCがallーorーnoneに発生する事から,単一介在ニュ-ロンが単一である事を確定した。次に頻回刺激により,シナプス潜時がほぼ一定値をとる事から,単シナプス性のIPSCである事を確認した。この条件下で,細胞外のCa^<2+>濃度を系統的に減少させた。細胞外Ca^<2+>濃度([Ca]o)の減少に伴ない,IPSCのfuilureが増加した。又,IPSCの振幅も減少し,その結果,平均振幅は[Ca]oの約3.1乗に比例して減少した。即ち3〜4分子のCa^<2+>の結合により,シナプス伝達物質の放出が行われている事が示唆される。観察されるIPSCの振幅(failureを除く)は,一方,0.7mM[Ca]o以下では,一定の値に収束した。この最小IPSC振幅は約50PSで,チャネル数としては,約14個に相当する。最小IPSCは,シナプス伝達物質の最小単位(伝達物質量子)に匹適すると結論される。量子(quantum)サイズは,分散係数が0.52であった。この値は,神経筋接合部で従来報告されている値(0.3)よりかなり大きい。量子サイズの大きなバラツキが,シナプスの位置の相違によるものである可能性を検討するために、riseーtime,と振幅の相関を検討したが,相関は得られなかった。従って,量子サイズのバラツキは,シナプスの位置によるものでなく,伝達物質素量のバラツキ,又は受容体密度のバラツキを反映するものと結論される。ここに観察された量子サイズをもとに,IPSCの量子解析を行なったところ,IPSCの振幅は,二項分布,ポアソン分布のいずれにも適合しない事が明らかとなった。不均一量子サイズによるIPSCの構成がその根底にあると思われる。
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